せっかくの連休だったので札幌に行くことにした。やるべきことはなにもない。やりたいことは山に行くことだったが、でっかい低気圧がやってきているので無理。あとは読書か小説でも書くぐらいだが、連休をまるまる使ってやるべきことでもないだろう。
それにたぶん、俺には移動が必要だ。
日常を客観視できるぐらいの距離をとらなければならない。そうして初めて命の使い方を考えることができる。ならば札幌に行って、無理にでも刺激を探してこよう。
刺激=裁判傍聴
という図式になってしまっているのもアレだけど、札幌地裁に行ってきた。はるばるJRを乗り継いで、午前中にはつくことができた。
放火
人生に絶望した若者が、自宅を燃やしてしまった事件。がんばれよ。
強要、殺人未遂
キレた男が女を包丁で切りつけた事件。被害者女性の証人喚問から始まり(なんて悪い男なんだ・・・)と第一印象。次に被告人質問が始まると(なんてヒドイ女なんだ・・・)と第二印象。検察による被告人質問になると(やっぱり男がダメなんじゃないか・・・)と第三印象。裁判員の判断はどっちなんだろう。
16時前に地裁を出て、カプセルホテルにチェックインし、すすきのをぶらぶらする。別にメシなどどこでもいいし、チェーンの焼き鳥屋でも入ろうか・・・となってしまうところを「いかん!刺激を!!」と入ったことのない個人店に入ってみる。ビール2杯、焼き鳥いろいろ、餃子と焼きおにぎりとおでんを食べる。ああ、うまいなあ。ふつうにビールがうまいのはちゃんとサーバーがメンテナンスされてるからだし、焼き鳥はカリジュワで今まで食った中でも一番のうまさ。おでんも染み染みになっていてとても美味しかった。焼きおにぎりはアレだった。餃子は俺のほうがうまいという自信がある。このあたりの料理の味の凸凹がとても面白かった。個性があっていい。
18:30になり、迷っていた店に行くことにする。予約をして、マックで時間つぶし。ニッカの看板をバックに記念写真を撮る観光客を見ていたら20時になったので店に行ってみた。
「いらっしゃいませ」と黒服に案内される。田舎者の貧乏人である俺にとって、とても新鮮な接客だ。高い店、ではないはずだ。なんてったって、ニューハーフのショーパブなのだから。
ショーが始まるまでの1時間。2人のフロアーさんとお話しした。ドキドキする。だってニューハーフの人なんだぜ!
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1人目のコに股間のブツについて聞いたり、いつから心がどうだったか?なんてしつれいじゃないかな?と遠慮しながら聞いた。「なんでも聞いていいよー」と優しい対応だった。前は居酒屋とかラーメン屋で働いていたらしい。おお、俺も居酒屋やってたよ。えー。たいへんだよねえ。でも、いまはショーのレッスンがあるから寝られないんですー。なるほど。
もう1人。ベテランのフロアスタッフと話す。キレーな感じ。そうゆうと「お金がかかってますからww」と明るい。俺もガンガン楽しく話・・・できなかった。実は予算的にカツカツで、あんまりガブガブ酒が飲めないのだ。それに1人だしね。明らかに場違い。「でもキレーな人一杯いるし、男も女も関係ないですねー」というと。「でしょー」と笑って、横を歩く超ビューティフルなスタッフのミニスカワンピのケツをまくり上げ「このケツとか!」とピシャーンと叩くのだ。白く美しいその下半身(男)のケツが揺れるのを俺は見た。なんか信じられなかった。それはとっても価値のある美しいものだと思ったからだ。ただの男のケツなのだが、ルネッサンス時代だったら巨匠に油絵で描かれているだろう。その芸術的下半身が、目の前でアフリカの打楽器みたいに叩かれていた。そしてノーリアクションだった。はえー。日常?
このケツドラムでここに来た価値はあった。連休を使って札幌に来た意味があったと感じた。
ショーが始まる。さっきのフロアスタッフの言っていたことがわかる。ステージとは、残酷な場所だ。鍛錬やセンスがばっちりと出てしまうのだ。ただのスピンでもベテランと新人はまるで違う。ベテランはやわらかく、そして強い。軸があり、表現がある。新人ちゃんのは決められた動きをしているだけだ。がんばれ、新人。
1時間ほどのショーを楽しんで、会計をした。1万円以下だったので安心。
よい刺激だった。
あのケツドラムを胸に今年も生きて行こう。ホテルに帰って、風呂に入り、口腔、鼻腔を徹底的に洗う。そして温泉とサウナで死ぬほどあったまる。今年一番の寒気に負けないように、速攻で寝た。
上下に人がいない2次元的カプセルホテルだったので、とてもよい眠りだった。ベッドも上質、普通のホテルよりも良い。起床して、広く機能的なワーキングスペースで読書をしながら、今これを書いている。