小説の練習
仕事でバイクに乗っている。人には言えない仕事だ。法定速度を無視して、物をA地点からB地点まで運ぶ。それに対してちょっとだけ色を付けた送料をもらうのが俺のスタイルだった。「それってバイク便でしょ?」と思うかもしれないが、実際に俺の仕事を知った…
前方100mの木陰に獲物を確認して俺は肩にかけていたレミンチェスターを下ろし近くの白樺に固定した。胸のポケットから慎重に弾を取り出し、音が出ないように込める。この距離ならばバレることはまずないが、手からは汗、呼吸は自然と抑えられた。対象のエリ…
俺は今大海原を眺めながら煙草を吸っている。潮風は生暖かく、ウミネコがにゃあにゃあ鳴いていた。眼下を見下ろすと100mはあろうかというまっすぐな壁。高所恐怖症の俺にとってはややぞっとする光景だ。もし、落下したら海面はコンクリートのような硬さとな…
父が私たちを捨てたのは、6年前。わたしが小学校に入る前でした。 転勤を命じられて、一生その田舎町に住まなければいけないってマジ?と母は怒って実家に戻り、それをきいたおじいちゃんが激怒して父の元になぐりこんだらしいです。わたしはその時寝ていた…
俺は1人で居酒屋を経営していて、そこはなかなかの好立地にあった。駅から近く、それでいて近すぎない。そんなテナントが開いていたのは本当にラッキーで、直接交渉したら数万円家賃をおまけしてくれた。 そんな場所だから居酒屋は長続きした。割とスムーズ…
本当の淋しさを知っているだろうか。俺は知らない。郵便局で保険を売っていたことに限界を感じて2年目で辞めることを決意した俺は、3年目をひたすらさぼることに費やした。まだ20代の若造が1日中さぼっていることに周りは誰も気づかなかった。もともと、仕事…
俺は麦がサララーっと吸い込まれていく様を見ていた。トラックが運んでくる麦は500㎏とか1トンとか半端ない量で、それらが専用の機械にごんごん吸い込まれていく。その光景はちょっとすごい、人生で1回は見ておいて損は無いと思う。小さな山だった麦が、アリ…