モトハチ(元蜂の宿管理人のブログ)

閉鎖したライダーハウスの元管理人のブログです

引き返すことをやめたら前に飛ぶしかない

ガタカという映画を見た。

主人公はとある不正(遺伝子情報の詐称)を行う。会社で殺人事件が起きてそれがバレそうになるというSF。夜勤明けにだらだらと見ていて、最後は胸が熱くなった。

優秀な弟と遠泳で競うシーンがあるんだけれど、途中で弟が「よせ、死ぬぞ」と引き返すことを提案する。「俺は最初から引き返すことなんて考えていない!」と主人公が言う。死にたくないなら前に進むしかない。そんな状況に自分を追い込める人間は無敵だ。

やっぱり自分を投影してしまうのだ。郵便局をやめて社会不適合者と認識した自分。なぜか商売を始めて前に進むしかない状況になった自分。「儲からないでしょ」と言われてもよくわからなかった。生きるためにあがいているのだ。ひきかえすことなんてできないと思っていた。だから前に飛ぶしかない。それはもちろん錯覚で、ただの自己暗示に過ぎないのだけれども強烈なエネルギーだった。

いま、あっさりとサラリーマンに引き返し、ぬくんくと生活している。職場には若者が入ってくる。なかには過去の自分のような不器用でブギウギしているのもいる。みんな彼を成長させようと必死だ。だけど本人はそれに気づかない。俺だけが彼を必死にさせる方法を知っている。それはとても残酷な方法だ。

すでに与えられているものを、人は求めない。ガタカ、いい映画だった。若いユマ・サーマンは美しいの壁を越えてなんか怖い。