モトハチ(元蜂の宿管理人のブログ)

閉鎖したライダーハウスの元管理人のブログです

紋別の殺人事件の事を未だに思い出す

今週は3日ほど裁判傍聴に行けた。どれも深い。息子に「お腹空いた」と言われパチンコ屋のトイレで包丁を持って強盗未遂を働いた母。夫婦で2000万の貯蓄があるのに、スーパーで万引きがやめられない女性。夢の中で出会った運命の女性に遭うため、旭川駅に住み着き万引きで生活していたホームレスの男性。離婚した息子の近くにいると誘拐してしまうかもしれないからと旭川まできてホームレスになる男性。年収の高い彼女のライフスタイルに合わせるため、彼女のカードでデート代を支払っていた彼氏。俺はその物語を記憶する下種な最低男だ。

この下卑な趣味を突き詰めると、いずれマスメディアになるんだろう。ほっといてくれと当事者は思うかもしれないし、そうでないかもしれない。「雪ぐ人」という本を読んだ。おそらく日本で一番無罪を勝ち取っている冤罪弁護士の本だった。

有罪率99.9%、普通の弁護士なら1生に1度あるかないかという無罪判決を14件取っている今村核弁護士の話。なんとなく知っていたけど、刑事裁判なんて金にならない。金にならないし、感謝されることも実はそんなにないらしい。そしてなにより、権力の横暴というか腐りきっている日本の司法に絶望することのやるせなさ。それが読んでいてキツかった。

裁判傍聴でも刑事裁判において弁護士がやることといえば、情状酌量を主張して執行猶予をもぎとることに尽きる。それをいかにオートメーションでやるかがポイントなのだろう。「今日初めて被告と会ったのです」と言う弁護士も見たことがあるけど、そんなこと珍しくもないんだろう。

そんな世界で冤罪と戦うってのは大変だ。「なぜやるのか?」という問いに対して「それはなぜ生きているのか?という問いに近い」という。ああ、いいな。自分もなぜ、裁判傍聴をするのか?と怒られたら「生きているからだ」と答えよう。なんの答えにもなってないけど、反論を潰す意味わかんなさがある。

今、紋別の殺人事件を思い出して深みにはまっている。この事件は言ってみれば身内の事件で、そもそも司法すら介入すべきではないのかもしれない。ましてや他人である傍聴人なんて最悪の存在だ。

だけど、だけどね。世の中には生き難さを抱えている人がいるってのを皆知るべきだと思うのよ。そんな人がいるって知れば、きっともっとやさしくなれると思うのね。そうなれば、私達の社会は1歩、前に進んだと言えるんじゃないかな。

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