25歳の頃から28歳になるまで、かんぽ生命(当時は郵便局の貯金保険課)で働いていました。私が辞める頃に、公社から民営化になったあたりです。
今回の不正契約について、職員へのSNS投稿などが禁止されているというニュースを見て「いまさら?」と思いました。
https://toyokeizai.net/articles/-/291889
私が働いていたのは、もう10年以上前ですが、その頃からすでに乗り換え契約などは行われていたと思います。トップ営業マンの話などを聞きに行った時も、そんな話をしていたのを覚えていて、数字(契約の実績)が苦しいときは、その家に行って、半年前契約した保険を乗り換えさせるんだと言っていました。それは、仕方のないことなのだと。
売れない営業マンだった私にとって、優秀な成績を収める彼らの言葉は絶対正義でした。ですが、あまりにも個人の利益を無視した話だとも思いました。自分の親にそんなことをされたら、どう思うのでしょう?そして、そんな形で利益を上げるシステムに、人生を投じて良いのでしょうか?
すべての研修に参加し、色んな人の話を聞きました。同じ部署にも成績優秀な人がいて、毎晩のように飲みについて行っては、どうやって仕事ができるようになるか?について話していました。彼の仕事についていったこともあります。コンプライアンスを守った営業方法でしたが、私にできるとは思いませんでした。
そして3年たち、なんとか、私にフィットした営業方法を見つけたのですが、それをヤッた相手から契約後深々と頭をさげられ「なんとか、キャンセルしてほしい」と言われたこともあります。とても残念でしたが、同時に、自分のヤッたことを知るきっかけになりました。仕事だからといって、人を苦しめていいのか?そんな葛藤を抱えながら働いていました。
この辺りから、毎日コンプライアンスについて、会社から言われるようになります。耳にタコができるぐらい。
ですので、かんぽ生命としてはコンプライアンスの徹底について、かなり厳しく守ろうとする姿勢があったのは間違いありません。
問題は現場の現実的な数字で、どうやっても達成できないノルマを超えるためには、コンプライアンスは形骸化してしまうのです。押し売りのようなやり方で、数字を上げる人もいました。
必要な人に、必要なだけの最低限の保険をという、簡易保険のコンセプトから、かなり離れて来ているのを感じました。悪いのは誰なのでしょう?無理なノルマを掲げる人?でも、ノルマが無くなったら、現場はサボる人が出てきてしまいます。コンプライアンスを無視する現場?巨大な郵便局のシステムの1つである簡易保険の現場がすべて悪いとは思いません。やりたくなければ、辞めればいいのでは?と思う人もいるでしょう。私はできましたが、もし結婚していたら辞めることは不可能だったと思います。
簡易保険の商品は、おそらくバブル期の高い利率に最盛期を迎え、そしてそのまま膠着してしまったのだと思います。時代にフィットした、新しい保険と売り方は、外資系の保険会社によって確立されました。ネットで商品を比べ、口コミを比較し、窓口で契約する。それが新しいやり方だと思いました。
保険の営業職員自体が、すでに不要になる時代が来ているのだと思います。もちろん、保険という将来に備えた商品を説明するプロは必要ですが、それはそんなに沢山はいらないはず。でかいスーパーの窓口にいれば良いのです。
飛び込み訪問などをして、実績が上がったこともありましたが、それは時代遅れのやり方です。どんな強者も時代には勝てません。仕事だからといって、悪事が悪事では無くなることもないのです。
郵便局のイメージも大きかったと思います。イナカでは特に、郵便局の制服を来ていれば、だいたいどんな家にも上がり込めます。それは、他の保険会社では不可能なことです。
郵便局だから契約してくれたし、信用してくれました。それは絶対に裏切ってはいけなかったはず。絶対に、絶対に、裏切ってはいけないものだったはずです。