裁判傍聴の記事になります。
今回の裁判は「強要」ということでした。
○○法違反とかではなく、そのまま動詞の容疑に興味がわきました。
被告は何を「強要」したのでしょう?
その内容を知ったとき、申し訳ありませんが笑いをこらえるのに必死でした。
物腰の低い紳士
今回の裁判は日本一周(2週目)ライダーのトトロと行きました。
法廷に入ると被告人席にロマンスグレーの紳士が座っています。
細身でかっこよく、まだ50代でしょうか?
裁判長が入ってきて「強要」についての裁判が始まりました。
農機具営業のプロフェッショナル
まず被告の名前、生年月日(65歳でした)、住所、仕事がきかれます。
「農機具の営業をやっています」
つまり農機具の営業マンとして会社勤めをしたあと、そのまま自営業として同じ仕事をしているということです。
出来る営業マンであることが推測されます。
そうでなかったら会社の肩書がなく、フリーで続けることなどできないからです。
きっと被告に農機具を任せっきりにしている農家さんがたくさんいるのでしょう。
あとで被告の妻が証言に立つのですが「家庭では200点の主人であり、父であり、祖父です」といってます。
地域の役員や行事にも積極的に参加して、町内会長やPTAの役員などもこなします。
夏には毎年キャンプに行って、孫のつながりから多人数を楽しませています。
そんな夫を「尊敬しています」と妻はいいました。
3人の娘を成人まで育てたし、「ありがとう」といって人生を終えたい。
そんな感動的なセリフもでてきました。
笑ってはいけない検察の論告
さて、検察官が被告の罪状を説明するのですが、その前に「被害者の特定は大丈夫?」と裁判長が検察に聞きます。
おそらく私たちのような傍聴人の存在を考えてなかったのでしょう、検察は「大丈夫だと思われます」と答えて論告にはいります。
「被告は20年不倫関係にあった被害者の陰部の写真データなどを所有し、手紙で「ばらまくぞ」という脅しをかけ、「嫌なら話し合いに応じろ」と電話の強要を迫ったものである」
(かなり意訳してます)
「その手紙の内容は『20年間愛した○○、愛した君のおっぱいやお○○こ(そのまま読み上げてます)をばら蒔くのは忍びないのですが、話し合いに応じてくれないならしかたありません。データはポストに入れておくから見ておいてね、話し合いに応じてくれなかったら君の実家にも送っちゃうよ』(意訳)となっております」
真面目なトーンで検察は読み上げます。
ロマンスグレーの200点お父さんに
「なにしとんねん」というべたな突っ込みが心の底から湧いてきましたが、もちろん我慢です。
必死に笑いをこらえすぎて、手汗がだらだら出てきました。
なぜ200点お父さんはリベンジポルノをやらかしたのか?
20年間の不倫の関係ってだけでもかなり異常です。
被害者は入社して3か月で被告と不倫関係に陥りました。 そしてそれから20年です。
それが終わったのは被告が会社を退職する前からで「とつぜん話をしてくれなくなった」「コーヒーも入れてくれないし、机も拭いてくれない」
電話も着信拒否になってしまって、全く話し合いをしてくれなくなってしまったのです。
20年の付き合いの女にそんな態度を取られて、被告は怒りを覚えたのではないでしょうか。
「本当にやるつもりはなかった」といってますが、プライベートなエロ写真をばら蒔くと脅すのです。
さすがに危険を感じた被害者が職場の上司に相談、そして自体が明るみになりました。
「強要」とはこの時「電話をかけさせた」ことを指しています。
完璧な男のしょうもないウソ
それにしてもこんな立場でなければ被告は尊敬できる男といっていいでしょう。
彼女一人幸せにできない私にとって、妻と娘3人を成人まで育て上げた被告の力はスゴイと思います。
そして退職後も仕事をつづけながら、自分のコミュニティに奉仕するその姿勢は社会人の鏡ともいえるのではないでしょうか。
私のようなハンパな男から見て、被告は完璧な男性像に見えます。
そんな被告が積み上げてきたものが、一気に瓦解したのです。
20年に及ぶ不倫とリベンジポルノという卑劣な行為によって、完璧な男の人生とその家族はすごいダメージを受けました。
裁判長の前に立つ被告は、肩を震わせて「どうしてこんなことをしてしまったのか・・・家族に申し訳ない」と誤ります。
ただ、仕事をするうえで不倫相手の態度はとてもやりにくいものになった。
だから話し合いをしたくてこんな手紙を送ってしまったのだと。
仕事に熱心だった被告らしい言葉です。
被告だけでなく、世の中の多くのお父さんが「仕事だから」という理由でいろんなものを犠牲にしていることでしょう。
弁護士もその方向で行きたいようで「20年不倫していきなり別れたのです、仕事に支障が出る状況を打開したかった」とサポートします。
私も「仕事に支障が出るのはマズイよなあ」と感じました。
その考えが間違いだと言ったのは裁判長でした。
あっさり見破る裁判長
「あなた自分の家族しか見てないよね?」
という切り口からいつもの佐藤裁判長が猛りました。
「っていうか『仕事に支障が出るから』って説得力ないよね」
「もしそうなら、もっとまともな手紙になってるよ」
「復縁したかったんでしょ?」
私は「ああ、そうか。そりゃそうだ」と手のひら返ししました。
「仕事に差し障るから」話し合いがしたいってんなら、もっとまともな手紙を送ってるはずです。
間違いなく被告には肉欲と怒りがあったはずです、だから卑猥な写真データつきの脅迫文を送ったのでしょう。
「あなたの娘がこんな被害にあってると想像してみなさい」
「殺してやりたい?それ、あなたがやったんですよ」
いつもながら見事な切り口、さすがの裁判長です。
そして再び笑ってはいけない論告求刑
そして検事が求刑するのですが、またあの手紙を朗読し始めます。
「20年愛した○○、○○のおっぱいやお○○こが世間にばら撒かれるのは非常に忍びないのですが・・・・・」
必死に傍聴席で笑いをこらえます。
そして弁護士のスピーチに入るのですが
「被告は善良な家族人である」
というくだりで、もう、爆発寸前でした。
笑いとはギャップなのだと裁判傍聴で確認することになるとは思いもしなかったです。
まじめなまとめ
ハンパものである私は、なんで不倫するのか分かりません。
今回の事件は新聞に載ったらしく、被告の家族が一番の被害者と言っていいでしょう。
被告の妻は被害者である不倫相手に慰謝料を求めるのでしょうか?
たぶんしないとおもいます。
見ていて一番忍びなかったのは、被告の妻です。
信じていた夫に20年裏切られていた気持ちを想像するだけで胸が痛くなります。
覚せい剤の時も思いましたが、不倫も絶対にしてはいけません。
すべてがぶっ壊れるからです。
そのことを裁判傍聴で学ぶことができました。
※被害者と被告の家族のことを考え、特定情報は伏せているか、フェイクを入れています
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