モトハチ(元蜂の宿管理人のブログ)

閉鎖したライダーハウスの元管理人のブログです

一人の人間をバイクに乗せた

去年、とある人からもらったDioという原付スクーターがある。

まあ、たいして使わないんだけど、2stだし、セーコマに行きたいときに、

ポッっとエンジンをかけて、暖気もしないでプイーンと走るくらい。

だから、欲しい人がいたらメンテしたときのパーツ代くらいで

ゆずってしまおうと思っていた。

 

んで、欲しい人が現れた。

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21歳くらいの若者だった

「 いつか金を溜めてハーレー買ってノザワさんのライダーハウスに行きますよ 」

っていってた若者がいたんだけど、ハーレーと免許費用に心が折れちゃったのよ。

 ・・・・・・無理っす

って言ったっきりバイクの話はしなくなったんだけど、暖かくなってからバイク熱が再発したみたいで「 あのスクーター欲しいです 」って言ってきたの。

家賃1万5千円で、車も持たない若者にとって、Dioはなかなかフィットする足になるんあじゃあないかしら? よろこんで譲ることにしたのよ。

 でも、彼は週6勤務で一緒に市役所にいくタイミングがないよのね。

 だから、ワタシ工場長のまえでわざとらしくシフト表とにらめっこしてたの。

「 ・・・・・うーん 」

「 どうしたの? 」

「 いや、かくかくしかじかで早く仕事が終わる日がないかなあって 」

「 じゃあ、明日早く終わらそう 」

ってなったのよ。 心の中でガッツポーズしたわ。

 んで、今日16時まえに仕事が終わって、市役所で名義変更して、一緒にバイクの練習したのよ。

 

 

・・・・・ まあ、これから慣れてくるよ

 

ってくらいのセンスだったんだけど、とにかくスピードを出さないし、ハンドルで曲がろうとするし、これからがちょっと不安だったんだけど、もう動き出しちゃったんだからしょうがないわよね。

 だから、最後に2stエンジンの癖についてレクチャーしたのよ。

 

「 このバイクはエンジンを廻すと、どっかんとくるから、それに慣れてみよう 」

「 え?原付は30キロまでじゃないんですか? 」

「 そうだけど、もし突然きたらびっくりするから、この河川敷で慣れておこう 」

「 そうっすか、で、どうすれば? 」

「 まあ、60キロまで出してきて 」

 

っていって彼は走り出したのね。 まあ、60キロならすぐに出るし、ちょっと走って戻ってくるかなあ って思ってたんだけど。 

 

プイイイイイイイイイイイイイイイインン

 

って走り出したと思ったら、あっという間に点になって、まったく戻ってこなかったのよ。

 

え?え?やばくない?

 

もしかして、河川敷から落っこちてないかしら?

 

ひんやりとした汗がながれてきたのね、だからワタシも追っかけてみたんだけど、

「 事故ってませんように・・・・・! 」って祈りながら走ってたら、

まえから彼が

 

 

プイイイイイイイイイイイイイイイイインン

 

って戻ってきたから一安心。 でも、表情が変わってたわ。

 

「 すごいですね、これ! 」

「 はやいでしょ? 」

「 はい!すごいです! 」

「 気持ちいいでしょ? 」

「 はい!もう! 」

 

そのとき、ワタシ

「 ・・・・・・・・・・・・・あ、なんかやっちゃった 」

って思ったわ。 弓と矢でやっちゃった、みたいな?

それまで、ほんとにストイックに仕事に打ち込んできた彼の人生が、

きっと大きく変わった瞬間に立ち会っちゃった?

そんな気がしたの。

最後にいい仕事したじゃないDio

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