モトハチ(元蜂の宿管理人のブログ)

閉鎖したライダーハウスの元管理人のブログです

「夜が明ける」を読んだ

夜が明ける(西加奈子 著)を読んだ。貧困やストレスをこんなにも強く表現する文章力がすごい。困ったことがあったら助けを求めろ、というのもこの作品の1つのテーマだと思う。

自分では解決できず、ほんとうにどうしようもならなく、未来が全く見えないという時がある。人生にはきっとそんな時期があるのだ。自分にも何度かあった。

かんたんなものでいえば、貸してたバイクが返ってこないということがあった。自分で取りに行けばいいのだが、そのとき、一人だったらきっと殴ってしまうだろう。そんなとき、常連の旅人に頼んで一緒に行ってもらったことがあった。誰も殴ることなく、じつにあっさりとミッションは終わった。

一人ではどうしようもないとき、もっとも強力な手段は他人に助けを求めることだ。

助けを求められることもある、そんなときはいい気分だ。

世の中は、そんな関係でなんとか回しているのだと思う。

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パラサイト 半地下の家族

を見た。こちらも貧困がテーマで映画だ。でもシンプルなコメディでとても面白い。ヒヤヒヤ感があったと思ったら予想を裏切る展開になり「えぇ・・・」という感じで終わる。

2日連続でこんなエンタメを味わっている。意識したチョイスではない。貧乏からの・・・というのは万人に響くのだろう。

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自分の家の2Fから自分の車を眺めながら「もうなにもいらないな」と思う。10月、外は雨、期せずしてやってきた連休、心が、完全に回復しているのを自覚している。

ニードルス 花村萬月著 を読んだ

西尾維新の小説をサラッと読んだ後に、花村萬月のニードルスを読んだ。

ポカリとアードベッグぐらい違うタイプの小説を頭に入れる。普段はこんなことできない。

なぜなら、ハナムラ文学というのは、とても読むのにエネルギーが必要なエンタメだからだ。突然降ってわいた長い休暇だからこそ味わえる快楽といえる。

例えば性描写。どんなエロチックな本も、動画も、インリン・オブ・ジョイトイも、ハナムラ満月というおじさんの書いた文章にはかなわないと思う。文字の中の女性たちは、リアルに勝るのだ。

世界観もギリギリなリアルアウトロー感があっていい。記憶障害の探偵も、VR探偵も、吸血鬼のお兄ちゃんも出てこないが、ヘロイン中毒のやくざや、同性愛者のミュージシャン、伝説の博徒などがでてくる。

ニードルスはロックバンドのお話なのだが、音楽への描写も秀逸だ。もとからハナムラ文学のすばらしさとして「音楽を聴くように読める」という評価がある。筆者の持つ天性のリズム感が、文章にでているのだ。

こんな濃厚な物語を書いているくせに、花村萬月は多作だ。自分の中に言葉が湧く泉をもっているのだろうか。そんなことを考えていたら、ニードルス終盤でこんな言葉があった。

「うん、つくって、どんどんつくって。素材を惜しまずに、とことんやって。もったいつけておこうなんて考えたら自滅だよ。空にしちゃえ。空っぽになれば、新しいあれこれを容れることができる。たいしたアイデアでもないのに次にとっておこうなんて考えるケチくさいバカにはなるな。・・・」

 

このセリフにそのヒミツがあるような気がする。

 

急に暇になったので

1週間以上の休みなど、これから先の人生ではナッシング!

と思っていたらやってきた。

嫁の職場のクラスター的な関係で。

そんな事情だから家にこもり続ける1週間がはじまる。

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映画を見る。

「ナイスガイズ!」

2人の探偵が1つの事件を追う話。

もうね、キャラが最高。

会話もたまらん。

欠陥だらけのダメ人間こそが愛おしい。

アメリカンアニマルズ」

普通の大学生が、ガードの緩い図書館から高価な本を盗む話。

実話。そして、面白いのが

・本人が出演してこの時の心情をコメントする

というもの。「芸術家として、なにかやらなければと思っていた」「はじめはあいつの話からすべてはじまった」「正直、あいつにかかわらなければと思っている」などなど。

この演出により、リアリティが見たことないレベルになっている。ルパンとかオーシャンズとかでは、あ、お話なのね。という怪盗が大活躍ってエンタメになるジャンルなのだけれど、これは違う。もし、自分だったら・・・と、実行役の主人公たちに完全投影してしまうのだ。

だから、盗むのに必要なことが「図書館司書のおばさん1人を無効化する」ってことだけなのだけど、フィクションならモルヒネとか大騒ぎを起こして・・とかいくらでも考え付くんだけど、実際どうなん?この映画では電気ショックバチバチでしびれさせて、縛るってだけなんだ。スタンガンではもちろん気絶はしない。大暴れする。そんな人を縛る。超大変。

だから強盗ってホントダメなんだと思う。映画を見ていて思い出したのが、裁判傍聴で知った強盗事件なんだけど、あれも本当にダメだった。

つー感じで映画はダメダメに終わるんだけど、最後のリアル主人公たち(7年の実刑判決を終えて社会復帰している)のコメントがとても秀逸で「え!?そうゆうこと?」とひねって終わる。いい映画だった。

 

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中島らもの「君はフィクション」を読む。

俺はらも先生の大ファンだ。

中島らもが物理的にもう新作を生み出せない(階段から足を滑らせて没)から、自分で小説を書いているぐらいだ。

たとえばこんなくだり

「十二、三分してノルモが効いてきた。血管の中をクスリが静かに散歩している。とろりとしてまぶたが重くなってくる。六錠がおれには丁度いい。十錠飲むとロレツが回らなくなる。十五錠飲めば道で昏倒する。百錠飲めば死ぬ。百錠飲んでもいいが、苦労して死ぬほどの意味は人生には無い。慣性の法則で我々は前へ進み、眠り、そして明日の岸辺へと辿り着く」(ねたのよいーー山口富士夫さまへーー)

 

いいね。苦労して死ぬほどの意味など人生にはないのだ。今年も日本一周ライダーが自殺してしまった事件があったが、もし、彼に会っていたらこんな言葉を送りたかった。苦労して死ぬほどの意味など人生には無い。がんばって死ぬんじゃないよ。と。そんな意味などないんだ。ご両親がセックスをされたから、いま、我々がここにいるってだけなんだ。像が左のわき腹から入ってきたわけでも、天使ガブリエルがおつげをしたわけでもないんだ。さあ、ライスで働けと。

タテの国を読んだ

ツイッターで流れてきた漫画を読む。

「タテの国」(田中 空)

という漫画で、120話、ジャンププラスで読めた。スマホ縦読みで読めてとてもスムーズ。スマホで読まれる前提の作品で、とても読みやすくていい。文字サイズとかね・・・

で、内容はとてもよいSFで「事象の地平線」とか「シュバルツシルト半径」とか、たまらん人にはたまらないワードが出てきて面白い。うん、おもしろい作品だった。それに1話ごとの引き込みもさすがジャンプで、一気読みしてしまった。

こんなに面白くて、エネルギーのある作品を、無料で読めてしまう現在って最高。

こんなに面白くて、エネルギーのある作品が、検索しないと出てこないネットって恐ろしい。

 

shonenjumpplus.com

 

人に知っていただく作業、すなわち広告ってとても大切なのだ。