モトハチ(元蜂の宿管理人のブログ)

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ニードルス 花村萬月著 を読んだ

西尾維新の小説をサラッと読んだ後に、花村萬月のニードルスを読んだ。

ポカリとアードベッグぐらい違うタイプの小説を頭に入れる。普段はこんなことできない。

なぜなら、ハナムラ文学というのは、とても読むのにエネルギーが必要なエンタメだからだ。突然降ってわいた長い休暇だからこそ味わえる快楽といえる。

例えば性描写。どんなエロチックな本も、動画も、インリン・オブ・ジョイトイも、ハナムラ満月というおじさんの書いた文章にはかなわないと思う。文字の中の女性たちは、リアルに勝るのだ。

世界観もギリギリなリアルアウトロー感があっていい。記憶障害の探偵も、VR探偵も、吸血鬼のお兄ちゃんも出てこないが、ヘロイン中毒のやくざや、同性愛者のミュージシャン、伝説の博徒などがでてくる。

ニードルスはロックバンドのお話なのだが、音楽への描写も秀逸だ。もとからハナムラ文学のすばらしさとして「音楽を聴くように読める」という評価がある。筆者の持つ天性のリズム感が、文章にでているのだ。

こんな濃厚な物語を書いているくせに、花村萬月は多作だ。自分の中に言葉が湧く泉をもっているのだろうか。そんなことを考えていたら、ニードルス終盤でこんな言葉があった。

「うん、つくって、どんどんつくって。素材を惜しまずに、とことんやって。もったいつけておこうなんて考えたら自滅だよ。空にしちゃえ。空っぽになれば、新しいあれこれを容れることができる。たいしたアイデアでもないのに次にとっておこうなんて考えるケチくさいバカにはなるな。・・・」

 

このセリフにそのヒミツがあるような気がする。