モトハチ(元蜂の宿管理人のブログ)

閉鎖したライダーハウスの元管理人のブログです

人生ドカンと一発逆転は無いよねって話

先日、傍聴に行った時のこと。

被告はよくある話で「一発ドカンと稼いで生きていく」タイプの人だった。コツコツと毎日仕事に行くことが出来ない人もいる。それはそれでアリよりのアリな生き方だろう。

なにより被告はまだ若く、ファッションもとんがっていた。80年代のファッションデザイナーが着ているような、ビニールっぽい生地のシャツ。ガリガリに細身の人なら、かなり俊英なイメージを見ている人に与えるかもしれないが、程よく肉付いた被告にとってそれは、日ごろの怠惰を周囲に見せつけているような恥ずかしファッションなのだった。

そうなのだ、被告の性格がこんなところにも見受けられる。そうゆうカッコが好きならば、まずはダイエットから始めるのが常道。だけど、それができないから、まずやってしまう。結果、ひどいことにあう。

「30歳にもなって・・・・」と検察、裁判官から責められまくっていた。「正直、甘かった」という佐々木健介のヘタなモノマネのような答弁。毎日働くことを拒否し、特殊詐欺の受け子なんてやってしまった甘えん坊の、悲惨な結末だと思った。

ドカンと一発、人生逆転ホームランを狙う人がいる。積み重ねた借金を吹き飛ばし、一気にリッチな階層に飛んでいくような生き方だ。そんな生き方もあるのだろう。それの代表は「ドカンと一発、人生逆転ホームラン」を狙う人を狙う商売だ。例を挙げるなら、特殊詐欺。主犯は陰に潜み、バカな受け子だけが捕まっている。被害金は一切弁済されない。

 

道が無いことに絶望し、受け入れ、歩み出す

数年前、山の師匠と富良野の沢を登った時の事。

その時の師匠はルートとかあんまり気にしない人で、もちろん自分も「沢に沿って登ればいいんでしょ?」ぐらいの軽い素人で、映画だったら冒頭15分で遭難死するようなポンコツクライマーでした。案の定よくわからない沢筋に迷い込んで、よくわからないピークに到達し、ナイフエッジの稜線をびくびくしながらあるいたのでした。

そして昨日のこと、夜勤でした。

介護施設の夜勤とは、すなわち利用者の排泄管理であり、おしっこオムツ交換で走り回るのです。1人の利用者がそろそろかな?と起こして、トイレに行くのですが「ヤダ、行きたくない」と拒否が始まります。それじゃあ仕方ない、ベッドにもどりますか・・と言うと「ヤダ、寝たくない」と言われます。

ああ、詰んだ。道が無い。

まるで富良野の沢にいたあの感覚。ポツンと廊下にたたずみます。こうしている間にも、動き出してしまう利用者がいるわけで、頭の中は「どうする?どうする?」とぐちゃぐちゃになってました。

ヘルプをよぶ、放置する、すべてをあきらめて逃げ出す・・いろんな選択肢がぐるぐる。寝ぼけて指示が通らない利用者と立ちすくんでいます。そのとき「暗くして、静かにすればいいよ」と先輩の言葉を思い出し、とりあえず部屋を暗くしてベッドに横ずけ、後ろからじっと見守ります。

本人には申し訳ないのですが、こうやって眠くなるのを待ちました。10分、20分と時間が過ぎて、やや動きが弱まったところで、後ろから声をかけお尻をもちあげます。イヤ!と拒否されますがそれを拒否。右の腕に力を込めて、安全確実にベッドに横にします。強引な介護に心の中で謝りながら横になってもらい、センサーを設置。数分様子を見ると、落ち着かれていました。

道が無くなったら、まずそれを受け入れること。そして周りを見渡し撤退できるならする、できないなら歩み出す。ナイフエッジの稜線のようにリスクはありましたが、あの時のように一生の記憶に残る時間でした。

この後はルーティン化された登山道の様な仕事だけ。眠いし体力は消耗するけど道があります。早番に引き継いで家に帰り、昼まで寝ます。3時間ほど寝ると全回復し、頭のMPがMAXになっているのを感じたのでライター仕事。今回も良い仕事を納品できたと感じたのでビールを飲んでおしまい。

今やっているこの案件も、これまでのライティングの仕事とはちょっと逸脱したものです。それ故に自由でやりたいようにやらせてもらっていて、つくづく道はないのだと感じるのでした。

きっと、舗装された道ではF1みたいに強烈なエンジンを持つ人にはかなわないからでしょう。スーパーカブのような自分には道なんてない方が向いているのかと思います。

人と会い、話すこと

去年の今頃、ライダーハウスを巡る旅をしていた。毎日、電話でアポを取り、できる限りライダーハウスをやっている人に会いに行った。

人と会い、話すことによって何かが変わっていった。世界が広くなったと言えるし、純粋さを失ったともいえる。大人になったともいえるし、つまらないやつになったともいえる。

1つ分かったのは、もう30代の時の様なことはできないということだ。爆発的に面白いものを作るには、核となる自分がおもしろい人でなければいけない。そこを失ってしまったようだ。先日、夢の中で兄から「この物件をライダーハウスにしないか?」と言われ「いやだ」と逃げてしまった。夢から覚めて「ああ、もう面白いライダーハウスを作る力を失ってしまったんだな」と感じ悲しかった。

40を過ぎたのだ。こんな年齢になって新入社員として介護施設で働いている。「つまらないやつになったな」と30歳の私に言われそうだけど、実際はそうでもない。

いまさら出世したいとも思えないので、競争意欲がない。他人から認められたいとも思えないので、だらだらと仕事をしている。安い給料はライダーハウス時代から比べると高給だ。お金は相対的な価値ということをしみじみと感じる。

高給取りなので、職場をちょっとづつ自分らしくアレンジしている。余った家電、素敵な小物で自分の物が少しずつ職場に増えていき、それを知らないで使っている人がいる。たのしい。

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いろんな100均を回って、セリアで発見した素敵なプラマグ。

2年前、おっぱいパブの話を書きなぐっていた。その時使っていたファーウェイのタブレットを利用者につかってもらった。読書が好きなのに、目が悪くなり文字が読めなくなったという人だ。電子書籍ならフォントサイズは自由だし、青空文庫なら無料で読める。1時間ほど使ってもらう。すごく嬉しそうだった。90歳近い人がタブレットをツイーッとしている姿がカッコよくて自分も満足した。

面白い介護をしている人が沢山いる。いま、その人たちの話を聴きに行きたい。

 

 

実家を出ろ、風俗に行け

3連休の3日目は何をしていたかというと、裁判傍聴に行きました。3月の晴天、素晴らしく気持ちのよろしい日でありました。

そこではわいせつな事件などがとり裁かれておりました。若い男性が、性に狂ってやらかしてしまったのであります。

「それを一方的に男の罪とするのは如何なものか?」

と弁護士は裁判長に申し立てております。女だって本気で拒否すればできたはずであると。恐怖で支配したって本気て言ってんのかと。

事件の本当のところは当の本人にしかわからないことであります。いや、ひょっとすると当の本人にもわかっていないかもしれません。人間の認知能力は時にファンタジーを現実と思いこむのが常。「こうあってほしい」という願いが現実にすり替わるのを、介護職である私は何度も眼前にしているのであります。

「女の恐怖がわからないのか、このド低能」

と女の検察官が全女性を代表して言いました。はて、かよわい存在であるうら若き女性にとって、成人男性の筋骨は存在するだけで暴力であると述べます。傍聴席に座るのは、それほどマッスルが発達しているとはいいがたいタイプの垢ぬけない男性でしたが、それでも恐怖なのだという官憲の主張でありました。

検事である彼女には分かっていないのかもしれません。彼女が放つ鱗粉が周囲の男を狂わせていることを。冷徹に冴えわたる頭脳と、それを包む黒き滝のような髪、ドノーマルなパンツスーツと見え隠れする白磁の肌を。

介護職兼エロ文筆家である私にとって容易に想像できるのであります。彼女が取り調べを行う様を、被告が劣情を抱かずにいられたでしょうか?断じましょう、それはありえない。仮に被告が女性らしいフェミニンな感じが大好きで、こんな感じの硬くて怖い感じの女性は全く興奮しないんだよねーとつぼ八で友達にだべっていたとしても、そんなものは容易に突破してしまう破壊力を持っているのです。そんなうっすいATフィールドなんて簡単に中和しちゃうんであります。

「わかってんのか、わかってんのかよ・・」と私は検事を被告人席に座らせ、私が代わりに検事席に座りました。

「なあ、わかってんのかよ」「なにが?」「わかってねえのかよ」「だからなに?」「そんざいが暴力なんだよ」「なんのこと?」「わかってない暴力を振るってんだよ」「そんなことしてないし」

私が刑務官に連れられて、法廷から退廷させられようとするとき、私は被告にこう叫ぶのでありました。

「実家を出ろ、風俗に行け」と。