モトハチ(元蜂の宿管理人のブログ)

閉鎖したライダーハウスの元管理人のブログです

道が無いことに絶望し、受け入れ、歩み出す

数年前、山の師匠と富良野の沢を登った時の事。

その時の師匠はルートとかあんまり気にしない人で、もちろん自分も「沢に沿って登ればいいんでしょ?」ぐらいの軽い素人で、映画だったら冒頭15分で遭難死するようなポンコツクライマーでした。案の定よくわからない沢筋に迷い込んで、よくわからないピークに到達し、ナイフエッジの稜線をびくびくしながらあるいたのでした。

そして昨日のこと、夜勤でした。

介護施設の夜勤とは、すなわち利用者の排泄管理であり、おしっこオムツ交換で走り回るのです。1人の利用者がそろそろかな?と起こして、トイレに行くのですが「ヤダ、行きたくない」と拒否が始まります。それじゃあ仕方ない、ベッドにもどりますか・・と言うと「ヤダ、寝たくない」と言われます。

ああ、詰んだ。道が無い。

まるで富良野の沢にいたあの感覚。ポツンと廊下にたたずみます。こうしている間にも、動き出してしまう利用者がいるわけで、頭の中は「どうする?どうする?」とぐちゃぐちゃになってました。

ヘルプをよぶ、放置する、すべてをあきらめて逃げ出す・・いろんな選択肢がぐるぐる。寝ぼけて指示が通らない利用者と立ちすくんでいます。そのとき「暗くして、静かにすればいいよ」と先輩の言葉を思い出し、とりあえず部屋を暗くしてベッドに横ずけ、後ろからじっと見守ります。

本人には申し訳ないのですが、こうやって眠くなるのを待ちました。10分、20分と時間が過ぎて、やや動きが弱まったところで、後ろから声をかけお尻をもちあげます。イヤ!と拒否されますがそれを拒否。右の腕に力を込めて、安全確実にベッドに横にします。強引な介護に心の中で謝りながら横になってもらい、センサーを設置。数分様子を見ると、落ち着かれていました。

道が無くなったら、まずそれを受け入れること。そして周りを見渡し撤退できるならする、できないなら歩み出す。ナイフエッジの稜線のようにリスクはありましたが、あの時のように一生の記憶に残る時間でした。

この後はルーティン化された登山道の様な仕事だけ。眠いし体力は消耗するけど道があります。早番に引き継いで家に帰り、昼まで寝ます。3時間ほど寝ると全回復し、頭のMPがMAXになっているのを感じたのでライター仕事。今回も良い仕事を納品できたと感じたのでビールを飲んでおしまい。

今やっているこの案件も、これまでのライティングの仕事とはちょっと逸脱したものです。それ故に自由でやりたいようにやらせてもらっていて、つくづく道はないのだと感じるのでした。

きっと、舗装された道ではF1みたいに強烈なエンジンを持つ人にはかなわないからでしょう。スーパーカブのような自分には道なんてない方が向いているのかと思います。