モトハチ(元蜂の宿管理人のブログ)

閉鎖したライダーハウスの元管理人のブログです

仕事はゲロを吐いてから

郵便局で保険屋さんをしていたころ、上司になかなかの香ばしい人物がいました。

N代理です。

N代理ば50代後半のベテラン営業マンで、長く保険畑で生活してきた人です。

人間的にはあまり尊敬できる人ではありませんでしたが、N代理の言葉にはいろいろ忘れられないものがありました。

「いいか、お前はまだ『良いヤツでいたい』って思っているだろ?」

押しの弱い私に「悪いやつになれ」と言ってくれたのです。

でも結局私は押しの強い「悪いやつ」にはなれませんでした。

そんな私にN代理はこんなことを言いました。

「俺だってこんな仕事は嫌だったよ。バイクで回りながらゲロを吐いたことだってある。」

その言葉に私は驚きました。 生まれ持っての押し売り営業マンのようなN代理も、最初は私のようななよなよした弱いヤツだったのです。

嫌すぎてゲロを吐いてしまうような仕事を続けてきたN代理を、ほぼ初めて尊敬した瞬間でした。

鋼の意思とド根性で嫌がる自分をねじ伏せたのです。

私はN代理のようにはいかず、結局仕事を辞めてしまいました。

 

※※※

 

それから10年ほど経ちました。。

ライダーハウスをやったり、居酒屋をやったりしてたら10年たってしまいました。

冬の配達のアルバイトをしたり、たまねぎ戦士になったりもしました。

いろいろやりましたが、保険屋さんほどの難易度のものはありません。

嫌すぎてゲロを吐くような仕事にあたることはなかったのです。

ですが去年から始めたライティングは、やりすぎると頭痛がしてきます。

頭痛がするほどが頑張っても、3000円も稼いでいないような状況です。

食べるためにはもっともっと書かなくてはいけません。

どうすればいいのでしょう?

もちろん、頭痛の先、ゲロを吐くまで書きまくるしかないのです。

ライターの先輩方の話を覗いてみても

「朝起きて、倒れるまで書く」とか

「パートナーに毎日ケツを叩いてもらう」など壮絶なものになってます。

なのでゲロすら吐かないで仕事をした気になってはいけません。

仕事はゲロを吐いてから、そこから始まるのだと思います。

 

日記:人生訓を語らない、牛さんすごい、山梨の地方病

8月になりました。

毎年来ていただいているお客さんとも会うことが増えてきたと思います。

昨日は漫画家さんとアフロがやってきて、いろいろ酒を飲みながら話してました。

その中で文学の話になって

「マスターも自分のことを書けばいいよ」

といわれ、なるほどと思いました。

 

人生訓を語らない

20歳前後の若者に出会う機会が多いのですが、そのたびに意識していることがあります。

それは「人生訓を語らない」ということです。

どうしても粗削りの素材のような青年には、したり顔で何かを語ってしまいそうになります。

この前も「これからどうしようか悩んでます・・・」という人に、偉そうに講釈をたれてしまいました。

ブログだったらいいでしょう、嫌なら読まれないだけですから。

でも隣に座ってしゃべるのは自制します、若者にはもっとくだらなくて、為にならないことをしゃべるべきです。

たとえば牛の胃袋について。

 

牛さんすごい

「なんで牛はタンパク質を取らないでいいか知ってる?」

という切り出しから始まったその話は、とあるライダーから聞いたものです。

牛には4つ胃袋があり、そのひとつ目に細菌を飼っているとのこと。

牛はその細菌を摂取することでタンパク質を補っているらしいです。

「すごい、生態系を体内にもってるんだ」

人類の家畜として、最後まで付き合うべき生き物らしいです。

ですが牛のげっぷが臭すぎて、環境破壊になるので最後の最後まではつきあえないらしい。

そんなことに感動したので、別のライダーに話したら

「ゴキブリもそうだよ」とのこと。

そこから山梨の寄生虫の話になりました。

 

山梨の地方病

「とにかくこのwikiを読んでくれ、面白いから」

とおススメされたので読んでみました。

地方病 (日本住血吸虫症) - Wikipedia

山梨に蔓延した寄生虫の話です。

その悪魔的なデザイン、そして感染経路にしびれました。

「すごい、キモイ」

面白いのですが、こんな気持ち悪い話をおすすめしてくる彼はきっと女の子にもてないんだろうなあって思いました。まあそれはどうでもいいので言いません。

「ミヤイリガイの発見あたりが熱い」とだけ。

「でしょ?」

原因不明の地方病の研究から、寄生虫の発見、そして中間宿主がわかったときの住民の気持ちが映画のように伝わってくるのです。

悪魔のような病気を移してくるのは、そこら中にありふれた巻貝でした。

川や池、水たまりやそこら辺の草。

そこら中にいる貝です。

人力や火炎放射、水路のコンクリ化や自然破壊に近い駆逐作戦が行われました。

それでも貝の繁殖力はすさまじく、長い年月をかける必要があったのです。

石灰や化学殺貝材をつかい70年かけて、やっと撲滅に成功しました。

その取り組みは似たような寄生虫に苦しめられている地域の希望になったのです。

 

※※※

 

「こんな話、ライダーハウスでしかできないでしょ?」

確かに、こんな話なら歓迎です。

そんな独自性がいいんです、為になる話が聞きたいんだったらテレフォン人生相談でも聞けばいいのであり、ライダーハウスにはこんな良くわからない話のほうがフィットしてると言えるでしょう。

 

すべてのモノには必要な対価がある

裁判傍聴に行ってきました。

「詐欺」とあったその事件の内容は、しょぼい事件と思ったら実にドラマに満ちたものでした。

 午前中の事件もそうでしたが、どんどん裁判に引き込まれていったのです。

hatinoyado.hatenablog.jp

 

無銭飲食5900円の被害

手錠と腰ひもをつけられて入廷した被告は、30歳男性でドモリ症です。

時折裁判長に「もっとはっきり喋って!」と怒られてました。

そんな彼の罪はカラオケ居酒屋で5900円の無銭飲食をしたというもの。

私は「あー、つまんないかな?」と途中で抜け出す覚悟をしたのです。

でも、徐々に、被告のドラマに夢中になっていきます。

 

神奈川で9年間働く

被告の地元は神奈川で、そこで高校から9年間「海鮮どんぶり屋」で働きます。

フリーターといえど月収20万ほどもらっていて、実家に5万ほど入れていました。

彼女もいてそれなりに充実していたのですが、借金がありました。

友人に300万の借金をしていたのです。

「そんなにどうして?」と裁判長は聞きます。

「友人から、利子とかもあって・・」と、ここで法廷にいる誰もが

「あ、ウシジマくんみたいなやつね」と感じました。

そして彼の人生が急展開したのは、彼女の浮気からだったようです。

浮気の前に借金があったのか、借金をしていて浮気されたのかはわかりません。

ただ、付き合っていた彼女に浮気されたことがとてもショックでした。

9年間働いたバイト先を辞め、別の仕事を探します。

ただメンタルは深く傷ついたようで

「自暴自棄になってしまうんです」

と飲酒を繰り返します。

それも無銭飲食です。

そのたびに母親が金額を支払っていたようです。

彼はそんな母親から現金10万円を盗み、さらにバイト先から70万を盗みます。

これは冒頭陳述になかったので、ひょっとしたらはじめて告白したことかもしれません。(みんな「え?」ってなってた)

合計80万の金を盗み、向かったのは北海道の深川市でした。

 

ライン掲示板で知り合ったJKの家に住む

なぜ深川市に来たのか?というとライン掲示板で知り合ったJKがいたからです。

母子家庭のJKのうちに1か月半滞在しました。

ただ、それが青少年育成条例に引っかかり、深川署から「深川から出ていけ」と言われます。

この時の所持金は76円でした。

「盗んだ80万はどうしたの?」と聞くと

「酒を飲んだり、風俗で使ってしまいました」

ここでも自暴自棄になり、酒(キャバクラなど)や風俗に逃げたらしいです。

「1日10万くらい使うこともありました。」

まさに豪遊です。 

計画性がなく、快楽に弱い男だと思いました。

破滅的で、それでいて頭が悪く、力もない。

そんな彼は市役所から640円もらって旭川に来ます。

640円は電車賃です、旭川には「キャバクラのボーイと知り合ったから」来たらしいです。

おそらく酒を飲んで仲良くなったのでしょうが、そんなのは知りあいにもならないでしょう。

案の定、ボーイと連絡はつかず、彼の人生は旭川で詰んでしまいます。

そこでなにをしたか?

財布には76円しかない、知り合いもいない、保護を受ける頭もない。

そう、彼にできるのは無銭飲食しかないんです。

繁華街のカラオケ居酒屋で4曲歌い(何を歌ったのでしょうか?気になります)店を抜け出して別の店で無銭飲食を繰り返します。

ラブホテルに入って金を払わずに出ようとしたところ、捕まってしまったというわけです。

 

彼の未来

今回は母親もあきれはてたようで、無銭飲食の金を肩代わりするつもりはないようです。 弁護士を通じて手紙を送っても、返事は返ってきませんでした。

過去の無銭飲食ですでに執行猶予がついているので、今回実刑は免れないでしょう。

おそらく数年は入ることになるはずです。

「出所したらどうしますか?」という裁判長の質問に

「母の元に戻り職を探します。介護とか(介護なめるなと思いました)。」

「でもまた自暴自棄になるのでは?」

「趣味のフットサルやスポーツ観戦を楽しみ、もうそうならないようにします」

「どうして自暴自棄になるのかな?」

「それは自分に甘いからです」

「それはおかしい」

それから裁判長の説教が始まりました。 私は裁判長の大岡裁き(この使い方が正しいかはわかりませんが)にスタオベ(注1)したくなりました。

 

自分に甘く、嫌なことがあるとキャバクラに行って酒を飲んでしまう。

そんな人間を矯正することは裁判所では出来ない。

きっとまた繰り返すだろう、このままだとあなたは独りぼっちになって行くはずだ。

そんな冷徹なお言葉でした。

 

ときにはイジメも必要なのではないだろうか

なぜ彼は無銭飲食をするようになったのでしょうか?

お金がないのに酒を飲んでしまうのは、アル中だからでしょうか?

彼女に振られたから、ストレスがたまっていたから?

見ていて、もっと根源的な問題が彼の中にあると思いました。

裁判中にチラチラみえる彼の母親の影、では父親はいなかったのか?

おそらくいなかったと思います、そして母親は一生懸命愛情をもって彼を育て、立派な犯罪者を作ってしまったのです。

母親は立派な人だと思います、無償の愛を息子に注いできたのでしょう。

だからお酒を飲んではいけないけど、我慢ができない人間になったのだと思います。

すべてのモノには必要な対価があることを学べなかったのでしょう。

男なら嫌なことがあっても、ド根性で耐えなくてはいけません。

それを知るには鉄拳や暴力、訓練やイジメがあるていど必要なのです。

「男は男に生まれるのではなく、男に成るべき時がある。 そのためには男として調理されなくてはいけない」

というようなことを「バンビーノ」というマンガに書いてありました。

おそらく30歳を超えて出所した彼の未来は、ウシジマくんにタコ部屋にぶち込まれることでしょう。

それが男になるための必要な試練です、そして同時にそれまでの怠惰のツケともいえます。

30過ぎてそんな鉄火場をくぐるのはとても厳しく、悲惨なことだとおもいます。

まあしょうがないか、一緒に行っていたライダーは「エスポワール(注2)にいそう」と言ってましたが、なるほど、確かにいそう。

 

※注1 スタオベ : スタンディングオベーションの略。 クラッシックのコンサートの後などで「ブラボー!」とかいって拍手して立ち上がること。 裁判所でやったら退廷させらます。

 注2 エスポワール : 名作「カイジ」にて借金返済のための救済として、債務者が乗せられた船。 そこでゲームに負けると人生が閉じる。

 

 

 

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裁判傍聴はやっぱり面白い

裁判傍聴に行ってきました。

旭川程度の人口では、そんなに毎日裁判があるわけではありません。

でもまあ、だめもとで。

とライダーと二人で突撃したら2本もみることができて、面白かったです。

 

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旭川地方裁判所にいって「刑事裁判の傍聴をしたいです」と受付に言います。

「まあ、無いだろう」と思っていたら、今日は3件もありました。

うち2つを傍聴しましたが、どちらも大変面白くタメになりました。

 

「コーヒーしかなかったけど、いいかな」

一つ目はもう開廷していて「昏睡強盗」とありました。

そっと法廷にはいると被告が座ってます。

睡眠薬で相手を眠らせて、その隙にサイフから1万5千円盗んだ罪です。

「しょぼいなー」と思っていたら、どんどんショボくなっていきます。

 

被告は女性、おそらく20代で化粧が生えそうな感じです。

Gパンをはいてうつむいているので良くわかりませんが、きっとなかなかの美人なんでしょう。

ただ彼女は精神的に問題があって、障害年金生活保護を受けています。

その収入は月12万ほどですが「公共料金が支払えない」ほどだったようです。

うーん、いろいろ突っ込みたいですが、犯行に及んだ理由として「貧困」をあげています。

困窮した彼女は「テレクラ」でお小遣いを稼ぐことにします。

ただ、テレクラが性的関係を持つようなものとは思っていなくて、デートクラブのようなものだと「思ってた」らしいです。

テレクラで男性と知り合った彼女は、カラオケで話すのですがその日はホテルに行きません。

なぜか次の日待ち合わせて、ラブホテルに行きます。

自転車で公園まで行き、そこで男性と待ち合わせて車でラブホに行きました。

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そこで男性が湯船にお湯を張っているときに、睡眠薬入りコーヒーを造ります。

そのコーヒーの味なのかどうかわかりませんが、男性は「おかしいぞ?」と思います。

「なんか入れた?」とでも聞いたのでしょうか、彼女は「砂糖」といってコーヒーを飲ませます。

 

で、男性はそのコーヒーを飲んでしまいます。

薬が効く間、30分ほどお風呂に入った彼女、その間にぐっすり眠ってしまった男性。 彼女は男性のサイフから1万5千円を抜きとり、ラブホテルを後にしました。

覚醒した男性は彼女が金を取ったことに気づきます。

怒り心頭のまま「待ち合わせの公園に行く」事を思いつきました。

すると、彼女が乗ってきていた自転車がまだあったのです。

そこで警察に行き、警官とともに自転車の張り込みをして、帰ってきた彼女を逮捕しました。

被害者の男性は「しっかりと罪を被せたい」と言います。 まあ、睡眠薬を飲まされて金を抜かれたのですから、気持ちはわからなくも無いです。

最終的には示談金10万を受け取って和解してます。 彼女も初犯ということもあって、執行猶予が付くでしょう。

しかし、まあ、突っ込みどころが満載でした。

 

「でも、買ってんじゃん」

自転車の張り込みに付き合わされた警官の声が聞こえてきます。

被害者の男性は「金銭を使って、女性と性的交渉にもっていこうとしました」。

立派な買春であり、犯罪行為です。

コーヒー飲むなよ

テレクラで知り合った女が、ラブホテルで差し出すコーヒーを飲む。

それも知り合ってから一晩すぎたあとです。

やばいなー、そりゃ「なんか入れた?」って聞きますよ。

「砂糖だよ」って女の言葉を信じるなよ、純粋か、ピュアなのか、買っておいて。

「お金が無くてやりました」

被告の女性は公共料金も支払えないほど、生活に困窮してました。

精神疾患を持ち、障害年金生活保護をもらってます。

そして昼職など(そこらへんのバランスはいろいろあったようですが)で月12万以上の収入があったということです。

「これで・・・困る?」と裁判長が聞きました。

たしかに、月収がそんなにあるなら旅人だったら遊んで暮らせるでしょう。

自転車wwww

さて、逮捕の原因になった自転車です。

心理として、自分とつながりのある自転車は即効で処分しそうですが、悠々と数時間後に取りに戻ります。

おそらく訴えられないと踏んでいたのでしょう。 

私はこの自転車を中心とした、被害者、被告、警察官、の絵ヅラを想像するだけで面白くなってしまいました。

このとき、被害者は怒っており「厳重な処罰を」と警察官に話していたようです。

そのときの警察官の心情を察します。

「計画性はありませんでした」

ここまでの手際のよさを見せ付けながら、計画性は無く突発的な反抗だったと被告は主張します。

「ウソつけ、男性は買春した手前、訴えることができないと思っていただろ」

のようなことを検察が言いましたが

「もし計画性があるなら、捕まってないと思います」

と舐めた答弁をかましてました。

まあ初犯ということでしたが、絶対過去にいっぱいやってるって。

父親の登場

さて、弁護側が証人を呼びました。

被告のお父さんです。

かなり痛い空気が法廷に流れました。

うわーいやだなあ、被告として証人に親が来るのも、証人として法廷に入るのもいやだなあ、心底いやだ、アレをやるくらいなら堀の中にはいるなあ。

テレクラで捕まえた男に睡眠薬を飲ませて金を奪った娘の父親は「ハッ」とか半笑いしながら弁護士の質問に答えます。

「娘さんには、これからどのようになって欲しいですか?」

「ハッ、そりゃ親なんだから反省して立派になってほしいです」

のような答弁。 被告とこの事件は、この親ありきで生まれたんだろうなあ。

 

まとめ

示談金を受け取り、親が更正の手助けを約束しているので、執行猶予は付くでしょう。

登場人物がクズばかりでしたが、最終的に困った人はだれもいないハッピーエンドのような事件でした。

それからランチを食べて、プールに行って時間を潰し、午後の裁判傍聴をしにいきます。

その事件もなかなか味わい深いものでしたが、とりあえずここで一度切りましょう。

テレクラで知り合った男に睡眠薬を飲ませて金を盗む女。

買春しようとしておいて、警察に訴える被害者の男性。

娘がこんなになっちまっているのに、なぜか緊張感のない父親

その三者三様が完成度の高いコントのようで面白かったです。

また、父親の教育というものがとても重要であると学ぶことも出来ました。

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