初登山は富士山だった
というか富士山に登ってみたかったのであった
一人じゃ不安だったのでタカサキくんという
郵便局の同期をさそって東京へ。
新宿からバスに乗ろうとしたときに、あることが発覚して
タカサキくんはすごいあわてていた。
僕はポカンとしてた。
そんな僕らの視点の違いをちょっと書いてみる。
バスに予約が必要だった
富士山行きのバスはとても混む。
が、田舎者の感覚として「 乗れないほどじゃないだろう 」
という甘えがあった。
受付の人に「 予約がないと乗れません 」といわれて、
「 どーして予約してないの? 」とタカサキくんがあわてた。
僕はドキドキしていた
よっしゃ!トラブル発生したぜ!
僕は旅にはトラブルがつき物で、それをなんとかしてクリアするのが楽しいと思う。
ただでさえ、今回はいつもと違う2人旅なので、ちょっと奇麗に予定を組みすぎたのだ。 「 バスに乗れない 」というトラブル発生によって、僕の旅スイッチが入った。 脳が回転し、ほほが高潮して、体はしゃっきり動き始める。
なんてったって、ここは東京なのだ。 金さえ使えばできないことはないだろう。
結局、鉄道を使って富士山吉田口にあっさりと到着。 バスよりも面白かった。
この日は7合目の山小屋に宿泊、午前3時に登山再開。 あたりは人だらけ。
暗くて何も見えない
山小屋を出発したとたんに問題が起きた。 ライトを持ってこなかったのである。
そこで、スピードの遅い夫婦に目をつけた。
後ろをストーキングする方法によって、なんとか暗闇の山道をすすむことができた。
よっしゃ、これでいける。 タカサキくんは何も言わなかった。
しかし、ライトを持っているご主人がクルリ振り向いて
「 後ろを歩かれると気になる、先に行け 」
えぇ・・・・・
ごつごつとした岩場を四つんばいで上る羽目になった
タカサキくんは何も言わなかった
8合目を過ぎたあたりでご来光、
山頂で見ることは叶わなかったが、いやあ、ありがたかった
なんてったって道が見えるのだ
タカサキくんがしゃべらない理由がわかった
8月とはいえ富士山の9合目は寒い
僕は防寒を着ていたので大丈夫だったが、タカサキくんは青白い顔で
「 ・・・・・さむい 」ボソッっとつぶやいたのだ
僕は「 はやくいえよー 」とわらって
ザックにつっこみっぱなしの、北海道でバイクに乗るときの防寒をとりだした。
「 もってるんなら早く言え 」と怒られる。
ようやく体温を取り戻したタカサキくんは
「 いろいろありえない 」とつぶやくのだった。
それから、山頂近くの渋滞にはまったおかげで、高山病にもならず
われわれ初心者クライマーは、無事日本最高峰に登頂したのだった。
郵便局員らしく、山頂郵便局から「 かもメール 」を出して下山。
帰りはバスだった、じつにカンタンでつまらない交通手段だった。
予定調和はつまらない
予定した行動を予想通りにすすまないと怒る人がいる。
それはレンガを縦に積み上げいくようなものだ。
最短で最高の高度にたっすることができるが、横からの力に弱い。
富士山の旅で、僕はタカサキくんをちょっと鍛えることができたのではないか。
彼は、レンガをまっすぐ立てるように、入念な下準備と情報収集を怠らなかった。
「 トラブルが起きないように 」行動するタカサキくんと
「 なにかトラブルが起きないかな 」と期待する僕。
結果として楽しかったのはどっちだろう。
後日、タカサキくんの結婚式で
「 なんと新郎は初登山で富士山にのぼったのです! 」って紹介されてた。
それを聞いて僕は「 ニヤリ 」と笑ったのだった。