僕たちの最大の恐怖は
「 金がなくなること 」だと思う
金がなくなったら死ぬしかない、
誰もがそう思い込んでいるんじゃないだろうか
でも、そうじゃないらしい
見えないセーフティネットはある
二年前、とある旅人が
「 じつは本を書いたんです 」と
電子書籍で出版したと言っていた。
著者のnさんは基本的におだやかな印象だが、
ふとしたことで、射抜かれるような意思を見せる
そんな人だ。
この本は彼の自伝であり、転落記であり、成長記である。
ホームレスに落ちてから、おそらくいま、僕がハマっている
ゲームの会社でプログラマーをしたり、
読めば波のある彼の人生を知ることができる。
彼と将棋を指した。
西成という「 日本のスラム 」と呼ばれるところで覚えたらしい。
うわさに聞く西成のスラム。 その生活に興味があった。
いつもの中飛車で待ち構えながら、nさんに話を振る。
「 あの、西成ですよね・・日本のスラム街といわれる 」
「 え・・うん、でも楽しかったよ 」
楽しかった? どーゆーことだ? 彼の本を買うことを決定した一言だった。
で、本に書いてあるのだけれど、西成にはNGOなどの
浮浪者に職を与えて、脱出応援システムのようなものがあるらしい。
はえー知らなかった。
つまり、金がなくなっても、ここに行けば死ぬことはないのだ
セーフティネットはあるじゃないか、見えないだけで。
生活保護には頼らないという矜持
セーフティネットといえば生活保護。 いろんな問題があるだろうが、
僕は死の瀬戸際まで、このシステムにはお世話になりたくない。
それが人間の誇りであり、矜持であるとおもっている。
だから、nさんのこの話を聞いたときは、あたたかな気分につつまれたものだ。
僕たちはついつい、
同じ土地で同じことを繰り返しているから、こーいった情報に気付かないで
極限までがんばりすぎて破局してしまう人もいる。
金がなくなったら西成でNGOを探せばいいのだ。
そのことを知っているか知らないかで、キモチの余裕が変わるのですよ。
後日、実際に西成に行って、自転車でぐるぐる回ってみた。
くさくて、あたたかな土地だと思った。
金がなくなったらここに来よう。
大事なのは動くこと
ホームレスといえば、忘れられない人がいる。
美瑛に来て初年度にmさんという高齢者がいたのだ。
mさんは仕事を探しているらしく
僕もなるべく力になろうとしたが、
ぽつぽつ小金をちょろまかしたり、
1000円ぐらいの支払いを滞ったりしていた。
「 どーも、mさん、帰る家がないらしいよ 」と同居の人からきいて
問いただしたら、土下座をしてきて
「 他に行くところがないんです! 」と言われる
10月下旬の、雪の降る日に追い出した。
残酷かもしれないが、同情できない理由があった
mさん、家で仕事なんか探さないで
「 エースコンバット 」というゲームばかりやっていたのだ
そりゃホームレスになるよー
セーフティネットはある、
だが、そこにお世話にならないように努力したり
そこから脱出できるように動いたり
そーいった精神を放棄して、稼いだ分だけ酒を飲んだり
なにもしないで破局をまったりする人には
セーフティネットなんてくもの巣のように
頼りないものなのだ