何かを書くのに一番シンプルなのはえんぴつです。そんな仕事をしたいと思っています。
私はボールペンをよく無くします。ボールペンは仕事に必要で、文章の材料を集めているときにもよく使います。ほしいときにボールペンがないのは嫌な感じがするもので、自分のそそっかしさに腹が立ちます。
今日、仕事が終わってえんぴつを買いに行きました。えんぴつなら無くしてもダメージは少なく、インキが詰まることもありません。ナイフを使って削るのも好きな所作です。
「そういえば図工が得意になったのもえんぴつ削りを褒められたからだな」てくてく歩きながら思い出します。1月の雪にむせ返りそうになりながら、30年前の出来事に思いをはせました。私はえんぴつをナイフで削るのが上手い少年でした。うっとりするほど美しく強い芯を露出させる才能があったのです。(30年後にその才能は謎の爆発を起こし、怪しいライダーハウスを作ることになります)
えんぴつをナイフやカッターで削る作業は精神を統一させる効果があります。それは書道の所作にも通じるものです。正座をして、墨をこする作業は精神を統一し芸術の発露に必要なものです。
それはWebライターにもいえるでしょう。ひとみしょうさんは「朝起きたら文章の神様に手を合わせる」事から仕事を開始します。
使う道具は筆ではなくキーボードですが、私には同じ行程に思えます。自分の肉体を消し、文章の向こう側に意識を飛ばす。それには人それぞれの段階と準備と所作があるのです。
私はえんぴつを削ろうと思いました。限りなくシンプルな機能、インクが詰まることなく書ける安心感、無くしてしまってもかまわないという空気感。どれも私の目指す仕事そのものです。
えんぴつのようなシンプルな仕事をしたいです。限りなくシンプルな文章で、誰でも理解できる安心感のある文章。ライターの存在すら意識されない、簡単に読めて意味の入ってくる文章を。えんぴつのようなシンプルな美しさを目指すのです。
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「しっかり!まとまった!文章をかく!」著:前田安正を読みました。
文章力本の中でも評価の高い一冊です。この本を元に今日のブログを書きました。
元は「鉛筆を買いに行った」という文章を膨らませました。「なんで?」をぶつけて膨らませていく方法です。
「ボールペン無くしたから」「なんで?」「鉛筆好きだし」「なんで?」「削るの上手いんだよね」「どうして?」「手先が器用だから」「何か得した?」「ライダーハウス作った」「どうしてボールペンじゃないの?」「書道の精神がすきなんだよね」
「あ、なんか言いたいことできてきた」
「何が言いたいの?」「鉛筆のシンプルさって文章につなげられる」「どうやって?」「安心感とか、安い所とか」
それに説得力としてひとみしょうさんのくだりをプラス。「感動は比較から生まれる」ってことでボールペンとえんぴつを比較しました。
良書です。ブログに書くことが無くて困っている人におすすめ。
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