特殊詐欺はとても凶悪な犯罪だ。
そりゃわかってる。でもやる側にもなんか理由があるのではないか?
という視線で書かれた渾身のルポだった。
高度に組織化された詐欺グループ。
道具、と呼ばれる騙されやすい老人の名簿。
3人でコンビを組んでそこに電話。
人の好い老人に当たったら何度も詐欺を行う「フィーバー」
反吐がでる。が、どこか既視感があるのは保険営業に似ているからだろう。
わすれもしない。新人研修にやってきた有績者が言う。
「数字に困ったらですね、みんなが行く家があるんです、そこで保険の書き換えをしちゃう」
フィーバー
***
時は流れて、いまは老人を守る仕事をしている。
厳しい仕事だが、誰に対しても胸を張れる仕事だ。
おまけに24時間365日営業なので、お盆になったらしわ寄せがすごい。
どんどんご家族は面会に来るし、スタッフは少ない。
俺は激しく消耗しながらも、なんとか乗り切った。
いいぞ
と思う。
消耗して、消耗して、消耗して
飢えて、飢えて、飢え切っても
俺は老人を喰わない。それが誇りだ。