正中線とおじさんの両乳首を結んだ交点にはアルカポネが隠した黄金が眠るという。
「それがこれだ」
そう言って俺はバイクにまたがり美瑛町を駆け巡った。バイクでければいけない。なぜなら今日は酷暑で、じっとしているイコール死。そんな日だったからだ。黄金はそこらへんに生えていた。もう、ばっきばきに乾燥が決まっていて、きっといまごろライスセンターでは不眠不休のトラック祭りが開催されていることだろう。
とてもよいことだ
俺はバイクに乗ることこそが人生の唯一の回答だと確信しながら考える。考えるのは、職場で退職した若者について。まだハタチに毛の生えたぐらいの彼の未来は黄金が約束されているが、それに気づくのは20年後ぐらいだろう。きっと今頃は死にたくなっているに違いない。俺は彼になんと声をかければいいのだろうか?「なんとかなるって」とか「これからがんばれよ」とかじゃあつまらない。つまらないし、響かない。響かない言葉は空振りした右ストレートと同じ、無いのと一緒だ。俺は、1つ、言葉を思い付いた。この言葉なら、きっと響くだろう。それは20年後振り返って「あ、あの言葉だったな」と思ってもらう可能性がわずかにある。うん、そうしよう。俺は良く乾燥した麦の香りを後にした。
家に戻るとくだんの彼から電話があった。俺は口を開いて言う。
「実家と親を捨てろ、捨てなければ素人女は抱けない」
愛しのアイリーンより。600円ぐらいで全巻よめるよ!
あと、バイクいる?と言って電話を切った。