今年の4月から、俺はゴムボートにお熱だった。
暇さえあればボートを浮かべる場所をさがして、そこにプカプカ浮かぶ自分を想像していた。
だが、実際にやってみるとうまくいかないことが多い。
まず、メインフィールドである日本海の激しさが想像以上だった。
内陸っ子の自分ではわからなかった。日本海の風と波は強い。
天気波予報とにらめっこして「これはイケる!」となった日でも、突然風が強くなって「はい、ムリー!」となってしまうのだ。
さらに言えば海までの距離も遠い。高速使って2時間ほどかかる。
これらの問題点
・波
・距離
をサラっと解決する場所があった。
湖である。
旭川から1時間ほどの場所にある岩尾内湖はプレジャーボートの利用を認めている。
俺はOさんを誘って岩尾内湖にいくことにした。前日は大荒れだったので、日帰りだった。グーグルナビに林道を案内されつつも、なんとかキャンプ場に到着。うん、きれいで良いキャンプ場だ。そこで肉を焼いたり、キャッチボールをしたり、将棋を指したりして時間をつぶした。
なぜ、時間をつぶしたのか?
風が強いのである。
はぁ・・・やはり俺はゴムボートの神から嫌われているのだろうか・・・・偉大なるゴムボ様!なぜあなたはこのような試練を私に与えるのですか!!!
と架空の神を責めていたら「いけるっしょ」と強風の中Oさんが言った。「白波立ってなかったらいけるっしょ」という。軽い。じゃあ、とりあえず、浮かべてみて。たぶん身動きとれないから速攻で帰ってきましょう!とゴムボートに空気を入れて、いざ出航。今回はバッテリーと電動船外機もしっかりと準備して持ってきていた。
この船外機も外れだった。パワーが弱いのである。それにそもそもこんなでかいゴムボートを動かすようにはなっていないようで、前回の使用時には日本海の波に対して全く抵抗できず「結局パドル最強っすね」とさっさとメルカリで売ってしまおうと決めたブツである。
そのモーターのスイッチを入れる。
すると思いのほか強い力で湖をかきまわすのだ。
支える手が持っていかれそうになったので、あせった。
がっしりと上部をつかみ、モーターの力を受け止める。
するとボートはスススーーーーイっと湖面を進んだ。
風も気にならなかった。
「おおおおおーーーーーーー!!!!!」と俺たちは歓喜した。
「すすんでる!すすんでるよ!」
実際、歩道を走行している老人用電動車いすぐらいのスピードだったが、確かに、ゴムボートは自由に湖面を移動できていた。
でかい湖面の真ん中でポツン。釣りは正直どうでもよかった。
ぷかぷかと浮かぶのがきもちいい。
モーターは静かに回り続ける。小さなバッテリーから1時間くらいは動くエネルギーがでてくるようだ。満足である。
あれだけ絶望していたゴムボートだったが、ここにきて再度価値を見直した。
これは良い遊びである。
「あれっすね、やってみないとわからないし、やり続けないとうまくいかないものっすね」と俺は言った。Oさんの軽さが無ければ出航もしていなかった。感謝しかない。