モトハチ(元蜂の宿管理人のブログ)

閉鎖したライダーハウスの元管理人のブログです

そこがお前のシスティーナ大聖堂だ

夜勤の前にテレビを見る。ミケランジェロの天井画は彫刻家であるミケランジェロにとって得意分野ではなく、どちらかというとやりたくない仕事だったという話。弟子に絵の具の調合とかを聞いたりして、苦痛にあえぎながら書き続けたということだ。

欲望の資本主義はコロナで経済がどう変わってしまい、どう変わっていくのか?について経済学者にインタビューしていく番組。「人は無限の富を求める。という前提は間違っているのではないか」と経済学者が言うのが興味深い。足るを知る、ってことを知る。だれもがランボルギーニや豪邸にあこがれるわけではない。それよりもティックトックでバズったり、Youtubeでそこそこ食べていける自由を求めているのではないか。金があっても、それを稼ぐための時間やエネルギー、税金や責任、管理や運用するセンスが必要だ。そこそこが一番ということを、情報化によって知った。昔から知っているはずなのだけれど。

夜勤が始まり、そして終わる。そろそろ1年近く働いていることになる。何人かの利用者が入れ替わっていった。最初からいる人は1年分老けていった。それは自分自身も例外ではない。ただ、死までの距離があるだけ。

ここが人生最後の場所であるならば、なにかいい思い出をプレゼントしたい。何かできないか常に考え続けている。庭に生えていた水仙を抜いて持っていった。そこら辺にあった花瓶にさして飾る。たったそれだけなのに、えらく喜ばれた。

夜が始まり、そして終わる。4時ごろになると空はすっかり明るくなる。仮眠の取り方を学び、眠気にやられることは無くなった。ただそれでも、家に帰ると倒れたくなる。まだだ、まだ眠れない。タイヤを交換したり雑用をいくつかこなし、風呂に入って眠る。気絶するように寝て、ライター仕事にとりかかった。ライダーハウスと居酒屋というもっともやりたい仕事はできなくなったが、それでもそれなりに楽しい仕事をやっている。ミケランジェロのような遥か天空を貫く彗星のような才能はもっていないが、ここが俺のシスティーナ大聖堂なのだとおもう。