モトハチ(元蜂の宿管理人のブログ)

閉鎖したライダーハウスの元管理人のブログです

芦別岳本谷ユーフレ川沢登りで心が震える

「あ、1日の休みはココだから」とoさんが言った。返事はYesしかない。ココがどこを指すかなんて関係ないのだ。高須クリニックぐらいYes。それが克也じゃなくても、ココ、が芦別岳という北海道の山奥に突き立っている名峰の沢を指していたとしても。

 

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芦別岳は前に登った時、クマに遭遇したところ。

 

hatinoyado.hatenablog.jp

 そんなところだから、出発日には2時に目が覚めた。集合時間が4時半だとしても。死の予感が体に冷たい電流を走らせる。大丈夫だ、oさんはベテランというか、沢に狂っている狂人だし、同行はそのoさんの師匠と、北海道の山youtuber兼山ライター兼なんかもうすごいひとの山親父さんなのだ。自分の両足が折れても下山させてくれるだろう。

 もっかい寝て、時間になった。芦別岳は芦別っていってるのに富良野の布部のあたりから登る山。6時に登り始めた。前回と同じように、旧道コースを登って、ユーフレ小屋にたどり着く。とてもいい山小屋だった。それから核心部のF1に来る。雪があるときは中央突破できるから楽という滝で、この時期は大きく右からたかまかなければいけない。うれしいことに、地元山岳会の方がフィックスロープを垂らしてくれている。これだけで2万はするとのことだ。ありがたく使わせていただく。ぐいぐい登るoさんに必死でついていくと「みなさん度胸ありますね!」と山親父さんが言った。度胸なんてない。っていうか、ブルージックのやりかたすら知らない。確保のやり方をしらないから、確保してこなかったのだ。沢で死ぬ典型例が俺だ。

もっと沢登りの勉強をしようと思った。山親父さんはハーネスをつけ、確保のギアやバイルというトンカチをもっていた。その存在すら知らなかったが、実際に使っているところを見ると、なるほど便利そうだ。この沢はとにかく距離だけが長く、滝の難易度はそれほどでもない。それでもF1のほかに2,3か所たかまきするところがあった。山親父さんが、これらのギアをつかってこれらのポイントをクリアする。それはもう、見ていてほれぼれしてしまうのであった。

ユーフレ川は徐々に細くなっていくが、岩を削り深い渓谷になる。この壮大な景色の中を、いくつかの滝が美しくながれている。そこに上品さを感じた。実にエレガントな滝が、その姿を見せている。シチュエーションも完璧だ。もし、これらの滝が国道沿いのマックの裏にあっても「へー」としか思わないかもしれない。すげーじゃんと言いながらマックシェイクを飲み、ドナルドと肩を組んで堪能していただろう。だけど、死の危険を感じながら体を動かし、いくつかの谷を越え、壮大な岩のステージと紅葉の鮮やかさを身にまとい流れる滝は別格だ。カクテルドレスを着てレッドカーペットを歩く女優のようだった。美しさに心が震えている。それがはっきりとわかる。

上戸彩のような滝。

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高橋ひとみのような滝。品とエロさがある。

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竹内結子のような滝。チームバチスタの栄光が俺は好きだった。

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ゴロゴロと崩れる岩ステージの急斜面を四足歩行で乗り切り、空をえげつなく切り裂く稜線に目を奪われながら登る。気が付くと夏道があり、後ろに前回クマにチャージをかけられた登山道があった。アイツとは今回は遭遇できなかった。それでいい。

下りはただ歩く。新道を3時間。白樺が美しかった。どこにでも白樺があった。白くほとばしっていた。稲光を逆さにしたような、そんな白樺を眺めながら歩く。日没前に車に到着。膝が笑っていた。「明日は富良野岳です」と山親父さんが言う。まじっすか。

その後美瑛に帰り「じゃ、8日」といって別れた。どこに行くのだろう。どこだろうと、答えはYes、高須クリニック