モトハチ(元蜂の宿管理人のブログ)

閉鎖したライダーハウスの元管理人のブログです

家を買う

毎日解体、毎日掃除。そんな日々も2週間を超えてくると、やりがいがでてくることに気が付いた。朝起きて「やるべきことがある」というのは、人間の遺伝子にプログラミングされた快楽なんだろう。朝飯をガッと食って、ドリルを手にしたり、ごみ袋に詰め込んだり、木材をまとめたりしていた。そこに兄がやってきた。ライダーハウスとか居酒屋とかの仕事を教えてくれた、私にとって社会の先生ともいうべき存在である。ごみ収集センターに行くから、捨てるものがあればついでにいいぞということで、大きくて車に乗らなそうなソファーとかタンスを捨てさせてもらう。助かった。

片道5分ほどの場所にあるセンターまでのあいだ、世間話をした。話題はやはりコロナの影響について。観光業である私たちにとって、今年の惨状を覚悟しあうような話になった。「でも、コロナ疎開とかで、空き家需要はあると思うんだよね」と私が言うと「なら、良い物件がある」と寄り道。蜂の宿から歩いて5分ほどの場所の一軒家の前までくる。売家の看板が立ててあった。赤い三角屋根がサザエさんハウス(エンディングで駆け込むやつ)を彷彿させた。「これ○○○万で行けるんじゃないかなー」その値段を聞いて驚いた。確かに古いけど、住宅街にある家の値段じゃない。「内覧だけなら無料だし、見てみれば?」ということで、その日のうちに電話をかけた。翌日の15時になら大丈夫。じゃ、それで。

なんとなくノリで決まってしまったが、買う気はない。ただ、手を出せる価格だったのと、内覧ってやつをやってみたかったというだけだ。彼女Aとも話して、もし家を買ったらどうする?というテーマでもりあがる。「ひょっとして、お風呂があったりして!」「ギャー!贅沢!」「トイレも家の中にあるかもよ」「マジで!?」「まさかまさか、冬に水道管が凍らないかも!」「あはは!ありえなーい」「洗濯機も凍らないかも!」「コインランドリーいらずじゃん!」・・・ひやかしのつもりだったのだけど、このとき(あ・・・いいな)と思ってしまった。

翌日、14時30分に歩いて出発。14時35分についてしまった。あたりを散歩する。普通の住宅街だ。400坪あるという今の場所に比べたら、とても窮屈に感じる。景色も望めないだろう。だが、家だ。ぐるりと1ブロックを散歩したら、不動産屋が来ていた。(冷やかしなのだ・・すまん)と心の中で謝る。しかし、初老の不動産屋はとても好感の持てる人だった。「・・・古いですよ」とかなり控えめな営業だったのだ。「住んでたおばあちゃんが亡くなって、持ち手とは連絡もつかないし、だれも買わないでしょうね」というネガティブ紳士。「冬は寒いし、お風呂も狭いでしょ、築50年だけど、ブロックだから窓は開きます」だれも買い手がつかないのだろう。どこか諦めている感じだった。「壊すにもお金がかかりますしね・・・何人かフランス人とかが内覧に来ましたけど、やっぱり買わないんです」問題は車を駐車するスペースが無い事と、内装に手を加えなければいけない事のようだ。ボイラーも使えるかどうかわからないという。確かに2階の床はぶよぶよで、梁が腐っていると思われる。水回りがイってたら直すのにかなりの金がかかるだろう。車を停めるにはブロック塀をぶっ壊さなければいけないし、かなりの手間がかかるだろう。

だが、家だ。それに自分なら何とかなるという自信がある。壁と屋根が健在なら、どうにでもなるんじゃないか?そんな気持ちが湧いてきたが、なんてったって家だ。そうやすやすとは買えない。だから100万円の値引きを提示してみた。言うまでもなく、人生最大の値引き交渉である。不動産屋はやや驚いた顔をして「わかりました!なんとしても持ち手と連絡を取ります!」と戦闘態勢に入っていた。

家に戻り「まあ、無理だよねー」と思っていたら電話が鳴る。「見つかりました!『しょうがないかー』と言うことです!」と不動産屋。

・・・・・ははっ、百万の値引き、成功しちゃったよ。あはははははは!!!!ウケる!百万だぞ!百万!!どうなってるんだ!不動産の値付けは!あはははは!あはははは!!あはははっはははは!!!!と笑った。