自然の味は、それが撮れる場所にしかないものなのである。
たとえばケガニは、海からあげて百歩ぐらいしか歩いていないものをさっとゆで、熱いものを食べるのが一番だ。(ムツゴロウの雑食記より)
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ウニを好んで食べることはありません。北海道に生まれ住んでおきながら、それをうまいと感じることはありませんでした。何度か口に運んだことはありましたが、高い金を出してまで食うものではないとおもったのです。
よく知られているように、ウニは出荷の際に薬品に漬けられます。それがウニの形を維持する代わりに、味を別物レベルに落としてしまうのです。
いつかチャンスがあれば本当のウニを食べてみたいと思いました。その思いを強くしたのがこの本を読んだから。
ムツゴロウさんは異常な人です。東大を出て映画製作会社に入り、その後北海道の無人島に移り住みます。
ケンボッキ島というその無人島で生活し、その後北海道で「ムツゴロウ王国」を作ります。小さいころTV番組になっていたのをよく見ました。
そんな異常な人だから、周りに人が集まります。
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・ある朝、浜でヒグマとすもうを取っていたら「見物料だ!」と言って漁師から卵のつまったマスを貰う。(実際にペットでヒグマを飼っていました)
・会合で中学生に「切除した胃(胃がんだった)はどうしたのですか?食べたでしょう、ね?食べたのでしょう?」と問い詰められる。(人間の肉を食ってみたいと公言していたため)
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そんなムツゴロウさんは究極で至高の美食家でした。ウニに関する記述がエグイです。
・ウニだって、ウニ漁の漁船から直接ぼぎとり、殻から身を救って食べてこそウニである。
と言っている。ああ、それはうまそうだなあ。ウニは産卵期の1月か2月、エゾバフンウニなら11月の半ばからが最上らしいです。
それを行きつけの料亭に用意させて食うのです。粒のくっきりとしたハリのあるウニをパクリと喰い
「これがウニだ。奇跡の味だ。本物だ。極上品だ。・・・・」
「こいつはすごいというウニにぶつかるのは、年に一度だもんな。あとは残り香を愉しんでいるようなもの」
ムツゴロウさんでも極上のウニにでうのは年に一度なのです。それも半日でダメになってしまうから、あらかじめ「来たら食うぞ!」と言っておかなくてはいけません。
はあ・・・どんな味なのかなあ?きっとこの世で一番うまいものの一つに違いないでしょう。