「上富良野に住もうと思います」
と、まーくんがやってきました。
彼は2年ほど美瑛から富良野の工場へバイトに通っていた、元「日本一周ライダー」です。
夏の間はライダーハウスから仕事に通い、冬は雪山でリゾートバイトをするサイクルを2回繰り返し、北海道に根を下ろすことを決めたようです。
そして、夏の住処を上富良野で探すために、三度美瑛へ。私は「なんで富良野じゃないの?」と彼に聞きました。彼の仕事場がある富良野と上富良野は車で30分くらい離れています。
「家賃が高いんです」
自衛隊の街である上富良野だったら、3万ぐらいでアパートが借りられるからそのほうがお得!ということらしいです。で、そこを足がかりに市営住宅などさらにお安い物件を探す方針だと。
なるほど、現実的です。
でも、そんなことになったのも、2,3年前に美瑛にやってきて、富良野の工場のバイトを知ったからなんですよね。 たまたま偶然やってきて、そこが気に入ったから住み着く。その行為はとても無意味に聞こえますが、実は結構重要なことだと思うのです。
私も美瑛川が気に入ったから美瑛にやってきました。かれこれ8年になります。30歳を過ぎて初めて自分の意思で、自分の住処を決定しました。なので美瑛町の抱える問題とか、ダークな部分とかあるのでしょうが、ぜんぜん気にならないというか見えないのです。それよりも「あ、この商店はいい」とか「この路地入ったことがないぞ」とか、いまだ新しい情報が入ってくるので嫌いなことや暗いことが入ってこないのです。
この状態は旅と似ています。スーパーのレジの人の名前を覚えたり、知らない家の車を覚えたり、細かい情報がどんどん入ってくるのです。そして美瑛にやってきてからの自分はとてもハッピーでおもしろいヤツだとおもっているので、楽しい思い出しかありません。逆に28歳まで住んでいた故郷には、郵便局員時代の暗い思い出を思い返させる場所が一杯あるのです。
その土地に興味があるのなら、それだけで住むには十分な理由だと思います。
そしてまーくんと話をしていたら、マントのみむらくんが「出て行くつもりです」と言いました。
彼は流れ者で、どこに行く理由も無いはずでした。 美瑛が気に入ったから、それだけでやってきたのです。「どうしたの?」と聞くと。
「バイクの免許を取りに山形まで行ってきます」
ということです。 つい先日、ライダーの後ろに乗せてもらったことがあまりにも印象的な体験だったので、ライダーになることを決意したらしいです。
いったい、何が自分の人生を変えるのか?後から思い返せば、それは「たまたま」としか言いようの無い出来事かもしれませんが、興味があればやってみたほうがいいでしょう。やるしかないともいえます。それは正解かも不正解かもしれませんが、自分が決めたことならばすべて受け入れられるでしょう。理不尽な「たまたま」に襲われたとき、耐えることが出来るのはそこに立つと自分で決めた者だけだからです。
※
地元に帰ってドローン。 クワガタをとったり、ザリガニばばあに怒られたり、保険の営業をサボったりしていた山から。
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