自分の髪は剛毛で、よく生えた。
手触りが嫌いだったし、床屋代ももったいなかったので、
許しも得ないでぼうぼう生えてくる髪に
「 もう生えないでいいよ 」って思ったものだ。
思いが通じたのか、はたまた遺伝のせいか、
頭頂部のあたりが30あたりから寂しくなってきた。
てっぺん以外は波に揺れる 日高昆布のようにたくましいのだが、 てっぺんだけ岩肌が露出している。
「 ハゲになるのだ 」と知った。
ハゲになるのは別にいい、覚悟していたことだし、元々髪に愛着がない。
耐えられないのは
「 あっ、あなたの前で髪の話はダメでしたねwww 」
と、気を使われたり、
「 うわぁ、ハゲだ 」
と驚かれることがキツい。
「 はいはい、わかってますよ 」と居直っても、
「 居直っちゃったよ、ハゲのくせに 」って
常にハゲは受け身なのだ。
常にオフェンス側でありたい。
バイク乗りを描いたマンガでそんなセリフがあったが、
頭頂部だけのハゲというのはディフェンスになりがちだ。
オフェンス、つまり100m先でもわかるぐらいの存在感、
誰に対しても有無を言わせないスタイル。
フォーマルであり、スポーティーであり、宗教的なアレ、
スキンヘッドにした。
ぎりぎりまでバリカンで刈ってから、貝印のk2という
T字カミソリで剃り上げた。
頭がひりひりする、暫くすると慣れた。
外気に弱いので、いっつも帽子かパーカーが手放せなくなった。
風呂に入る度に剃るのだけれど、完璧に剃りあがると気持ちいい。 ただ、頭頂部以外は二三日するともじゃもじゃしてくる、頭頂部だけが完璧だ、もじゃもじゃしてる所も早く頭頂部を見習ってほしい。
スキンヘッドにして一年が過ぎると、これ以上のスタイルはないってことに気づく。
「 ああ、あの人もこっちに来ればいいのに 」って
思う。
スキンヘッドは攻撃的だ。
大多数のもじゃもじゃに対して 独立宣言をした者が頭を剃り上げるのだ。
スキンヘッドはごまかしが利かない。
否が応でも目立ってしまうので、常に視線を感じることになる。
スキンヘッドは 美しい。
何より清潔で、光っている。
ただ、ロマンスグレーの人を見ると
「 いいなあ… 」っておもう、
そんなかわいい一面もスキンヘッドにはある。
おわり