カニ道楽の看板のカニ、あのカニに肉がつまっていることがわかったのは今朝のことだ。
ススキノ大交差点の近く、国道沿いあるカニのオブジェはでかい。 その巨大なカニの爪の先から赤い血が滴っていて、道路にシミを作っていた。 発見は午前6時、昨日の営業終了時点ではなかったので犯行時刻はその間だろう。
午前7時になって警察の検分は終わってなかった。 野次馬が通行人の邪魔になっている。 広い歩道にびっしりと、カニに群がる人の群れだった。
「 コサイン木下だ 」と誰かが言った。
声のほうを見るとなで肩の地味な男が立っていた。
安っぽいシャツにジーパン、小学生のような髪型の地味な男だ。
アニメイトにいけば5人は捕まえることが出来るタイプ、そんな男が人ごみをモーゼのように割っている。
「 おはようございます、コサイン木下です 」
そう男がいうと警察の関係者がでてきて話を聞いている。
なんだか不思議な光景だ。 立ち入り禁止のテープを超えて、一人の
しょぼくれた男が警察と話している。 だれなんだ、コサイン木下。
警官としばらく言葉を交わしたあとに、
「 あっ、あっ、そうですか。わかりました。 」といって野次馬のほうに振り返る。
「 皆さん!犯人がわかりました。 タンジェント高木です。 」
おおっ!と野次馬の歓声。
「 これからタンジェント高木の逮捕に向かいます。来たい人はどうぞ。 」
そういってスタスタと歩き出してしまった。
野次馬の一部は付いていき、一部は時間をチェックしてどこかに歩き出し、俺を含む一部はカニの前に残った。
やがてブルーシートがかけられ、カニ道楽の営業も始まり、いつもの歩道に戻ったようだ。
自分の仕事の結末を最後まで見ることが出来なくて残念だが、コレくらいでいいだろう。 カニ本家に行って報酬を受け取らなくてはいけない。
オレはスタスタと歩き出し、「 それにしても誰だったんだ・・・? 」とコサイン木下とタンジェント高木について考えた。
おわり
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お金は出て行く、ほしい物はない
以上のようなことを考えていたら今日も仕事が終わった。 コサイン木下が探偵で、タンジェント高木が冤罪をかけられ、極悪人サイン青木がまったくでてこないという良くわからない話だ。
11月になってみると、たまねぎ工場は絶好調のようだ。 今週すべて月金で仕事がある! たしか去年の今頃はあまりにも暇で、ずーっとなにかを掻き毟っていたはずだから、流れるたまねぎを見ながら意味不明のストーリーを考えるほうが健康的、うんすごく健康的。
そんな神戸旅行から帰ってきたと思ったら、大家さんに5か月分の家賃を払って、よっしーさんと肩を組んでドローンを購入する今月。
ジェットコースターのようにお金が飛んでいく。 あばば。
でもまあ、週5で働いてしまったら人生を味わう時間なんてコールドスリープのようになくなってしまうので、この買い物はしょうがない。
なぜなら、人は積極的に社会に参加しなくてはならないからだ。
どーせポシャるであろうくだらない企みを胸に、なんとか社会へのへばりつき方を模索するのが楽しいのだ。 それだけなんだ、あとは健康で文化的な生活が出来ればなにもいらない、ほしいものはそれだけ。
よき買い物でありますように。
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