モトハチ(元蜂の宿管理人のブログ)

閉鎖したライダーハウスの元管理人のブログです

将棋で語る男たち

郵便局時代の先輩を家に呼んだ。子供のころから知っていて、仕事では神のようにかなわなかった人だ。すでに定年していらっしゃるが、退職者採用のシステムを使って、いまでも週3日ほど働いているらしい。

よく酒を飲ませてくれた。その度に私は仕事の悩みを打ち明けたものだ。コツのようなものも伝授していただいたが、結局私はそれを吸収することができなかった。

将棋好きが集まるスナックに連れて行ってくれた。当時の私は駒の並べ方ぐらいしか知らなかった。回ってきたカラオケとか歌いながら(こんなことしてる場合じゃないんだよ、仕事ができないんだよ)と思っていた。

 

郵便局を辞めて、自分の居酒屋を始めた時。お客さんとなんとなく「将棋でもやってみる?」という話になった。それからハマった。毎日将棋を指していると「ひょっとして俺はかなり強いんじゃない?」と勘違いすることになる。

 

地元に帰ったときに先輩に挑戦する。が、まったく歯が立たなかった。今思えば当たり前だ。相手がどれくらい強いのかすらわからないレベルの差だった。

 

それから10年ほど経過して、今日リベンジすることに。毎日3局アプリで指して、実力をつけたつもり。でも、勝てるかどうかはまったくわからない。

1局目、先手を貰っていつも通り中飛車へ。先輩は居飛車でどっしり受けてきた。序盤から中盤に差し掛かるあたり、自分にミスが出てしまった。取り返すように、細い攻めをつなげるけど、すべて吸収されてしまった。

やはり、強い。

2局目、相手に合わせるよりも、こちらのやりたいことをやる。パワー中飛車。相手が構えるよりも先に、1発入れて様子を見る。こちらのガードは最小限に、こまかく素早く動き回って、バランスが崩れたところを叩く。

先輩にミス。それをなんとかつなげて、こんどは先輩の攻めを受ける。囲いを崩され、王が脱出、相手陣に逃げまくって、なんとか1手の猶予を見つけた。

10分ほど考えて、なんとか詰みを発見して勝った。

 

仕事の話も終わり、将棋も1勝1敗。やっと普通の人として先輩を見れた気がする。「将棋強くなったなー!」と言っていただいた。

 

ほくほくして将棋盤を片付けた。すると来客したご近所のご主人が「やるの?」と対戦することになった。

自分の中ではずっと近所の大人。大人の男。会話を交わすことは無かったけど、将棋で交流した気分だ。

勝敗でいえば勝った。が、将棋盤を挟み、駒を交わす交流に満足感がある。これはネット将棋にはないものだ。

セブンイレブンマルチコピー機のおかげで、稜線までたどりついた話

父が亡くなってから47日が過ぎた。人が死ぬというのは一大事だ。

 

2週間は様々な感情、雑事であっという間に過ぎていった。幸い、ライダーハウスはもう終わりかけていたので、みっちりと張り付くことができた。

 

葬儀、ご近所あいさつ、公共料金の名義変更など「さしあたって、早めにやらなくてはいけないこと」から終わらせる。毎日のように書類を整理して、毎日のように、処理しなければいけない書類がやってくる。

 

簡単に処理できるものからやっつけていく。自然と残るのは「簡単ではない書類」たちだ。年金や高額医療費の請求、貯金や土地の相続など。専門用語が無遠慮に飛んでくる。ネットを使って勉強、理解する。すると次の専門用語がやってくる。その繰り返しだ。

 

「とてもじゃないけど、自分だけではできない」と母は言った。私だって「ネットなしでは、とてもじゃないけど理解できない」と思う。だから専門家がいるのだ。資格を持ったプロが。

 

例えば土地の名義を変えるには、法務局に行かなければいけない。そこで「どんな書類が必要か教えてください」というと、10pぐらいの紙束をもらった。登記申請書や相続協議書などのひな形になっていて、必要な空欄を埋めれば完成するようにはなっている。

 

ただ、親切なことは一切ない。必要な空欄で、土地の地番、地積、コード、課税対象額、手数料を埋めるところがある。その専門ワードの解説は一切ない。自分で調べろということだ。それが分からないなら専門家に発注しろと。

 

冗談じゃない。こちとら時間だけは売るほどあるのだ。それにインプットとアウトプットはwebライターの本業である。ググればプロの行政書士のサイトがいっぱいあって、親切でわかりやすく解説してくれている。

 

法務局でもらった紙束の100倍分かりやすい。それをもとにひな形を手書きで埋めていくのだけれど・・・ひな形の完成度が低いのだ。仮にも法務局で貰った書類なのに。

 

おそらくだけど、最初に誰かが作った書類。それを、何年も引き継いでいるだけのような気がする。例えば、家の作りを書くところに木造ウレタン構造とか、すでに書かれているのだ!ひな形なのに!!

 

はー、頭痛がしてきた。・・どうすりゃいいの?と考える。

・・

一から作るか・・・自分でグーグルドキュメント(クロムで使える文書作成無料アプリ)を立ち上げて、ひな形のひな形を作っていく。おお!手書きより早くて簡単!

 

サインが必要なところ以外を書いて、pdfでエクスポートする。それをメールでスマホに転送して、セブンイレブンに行く。

 

マルチコピー機を操作して、さっきまでパソコンで作っていた文書ファイルを紙にする。後は、これにサインと判子を押せばいい。

 

ネットで調べた必要書類(印鑑登録、住民票など)も取りそろえた(法務局の紙束には書いてなかった)。これで、後は提出するだけだ。来週電話して、予約して、提出する。そこにどんな秘密が隠されているのかわからない。きっとシロウトさんにはわからない常識があって、簡単にはお答えしてくれないかもしれないが、大丈夫だ。

 

それは感覚的には山登りに似ている。全ての書類を官公庁に正式に提出して、許可が下りるというのは山頂にたどり着くのと同じだ。必要な準備、通るべきルート、便利なツールと知識がいる。例えば、マルチコピー機がなかったら挫折していただろう。この素晴らしいツールのおかげで、山の稜線までたどり着いた。あとは最終アタックをかけるだけ。

誘蛾灯 鳥取連続不審死事件を読んだ

図書館でなんとなく手に取ったノンフィクション。

「誘蛾灯」とタイトルされたこの本は、「あの木島佳苗のような事件が鳥取でも!」という紹介がされていた。以前、木島佳苗のノンフィクションを読んでいたので、興味がわいた。

344ページあるこの本、読み始めたら手が止まらなかった。著者の青木理氏は実績のあるフリーライターで、作中「結局やっていることは出刃亀であることは間違いない。だが、どうしても真実を知りたいという欲求には抗えなかった」と語っている。

裁判傍聴を趣味にしている私にとって、このセリフは膝をパァン!と打たざるを得ないものだ。傍聴していると(世間で注目されるような大事件でなくても)人間や社会をそこに感じることがある。

この本も、視点は殺人という非日常の犯罪から、人間社会の日常へとシフトしていく。ゾワリと背筋が寒くなる。狂気は誰でも手の届くところにあるものだからだ。

 

事件の概要

鳥取連続不審死事件 - Wikipedia

2009年、鳥取の繁華街にあるデブ専スナックのホステス「上田美由紀」を中心として、スナックの常連6名が死亡した事件。うち、2名の死亡が彼女の犯した殺人事件として起訴され、死刑が確定した。

 

www.sankei.com

 

だが、内情はもっとドロドロとしている。

1人目は線路に段ボールをかぶって侵入し、自殺している。その段ボールに「愛をありがとう」といった遺書を書き残している。

2人目は海上事故。牡蠣を取る際に溺死。上田美由紀に金を取られまくっていた。被害者の母親に取材をしているシーンが壮絶。ゴミ屋敷にすむ生活保護者のリアルだった。

3人目は警察官。知的犯罪を対象とした2課の男性。金を取られている。妻と子供もいる。が、自殺。

4人目は起訴されている。睡眠薬を飲ませて、海まで連れていき、溺死させた。上田被告は否認している。「体格が違うから」と言う理由。本書でも「確かに考えにくい」と書いてあった。

5人目。川にて死亡。被告はそこでAという男性を呼びつけて、しまむらで服を買わせる。なぜなら水でびっしょり濡れていたから。殺害は否認。

弁護団は「川まで人間を運ぶことは不可能」としている。そしてAのことを「真犯人である」としている。著者は「耳を疑った」と書いてあった。

聞きたかったな。法廷で、弁護士が、真犯人を指図するのだ。

6人目。被告と同じアパートの住人が死亡。金をむしり取っていた。

被告には5人の子供がいて、その住人になついていた。子供をダシにして、男から金を奪うのは、被告の常とう手段のようだ。本を読みながら「そりゃ金を貢ぐかもしれないな」とちょっと思った。

 

視点のシフト

 

本書では「上田被告が犯人かもしれないし、そうでない可能性もある」というスタンスで語られている。が、内容は鋭い。研ぎ過ぎて、近寄りがたいナイフのような文章だ。行間から流血した肌のような感触を感じた。

例えば、後半で被告と面会をしている。その会話の内容、そして手紙を公開している。

さらに、被告の子供が被害者に送った文章。被告と被害者を引き合わせたデブ専スナックのママ、そして従業員。

いくら偽名を使っているとはいえ、ここまで書いていいのだろうか?と思いながら読んだ。

そして、もし、自分だったらここまで書けるだろうか?・・・・・

書かれた側にとって、迷惑なんて話じゃない。ペンを使った暴力と感じる人もいるだろう。

著者の強い信念を感じる。だって、もっと割のいい仕事はあったじゃないか。実際に木島佳苗の方の仕事の案件も受けていたとのことだ。この著者なら、もっと稼げる仕事がいっぱいあったはずだ。

でも、へそ曲がりを自認する著者は鳥取の事件を選んだ。そして、取材力、精神力、文章力。どれも圧巻。「恨むなら恨め」と覚悟しているのかもしれない。裁判傍聴で、ヤクザに囲まれたぐらいで逃げ去る私とは天と地の差がある。

 

そして、物語は1点に収束していく。

 

それは、事の始まりである、鳥取のスナックだ。

 

生活保護者が出入りするデブ専スナック。「まともじゃない」と同業者に噂される、日本社会の地の底のような存在かもしれない。下ネタとカラオケとドロドロの人間関係。ここに29歳で5回の離婚歴があるキャラクターが登場するのだけれど、70歳の生活保護者と籍を入れていたことがあるという話になる。

「だって、生活保護者だから定期的な収入があるでしょ。それを半分貰おうと思って・・・」という理由で結婚したらしい。

このセリフだけで、鳥取連続不審死事件から読者の視点をシフトさせている。人間の宿阿があり、業がある。金と愛が高速でやり取りされている。そう感じた。

 

まとめ

 

きっとこれからノンフィクションをいっぱい読むだろう。この本は、今年読んだ中でもベストだ。ミステリーよりミステリーだった。

 

 

物欲にケツを叩かれて

ドローンで世界トップシェアのDJIが、またやってくれた。

osmoポケットという新製品である。

 

バイクや自転車の動画を作るなら、こんな製品がこれから絶対必要になるであろう。

いま、TVで(例えば出川哲郎の充電させてもらえませんか?)はドローンの映像が必要不可欠まで来ている。

私も、DJIのドローンを使っている。例えば山登り。山頂からの映像は、ちょっとスゴイ。また、バイク。DJIはアクティブトラックという、対象を追尾するソフトが良くできていて、ドローンを空中固定カメラにすることができる。

 

ただ、ドローンだけでは動画は完成しないと思っていた。ドローンができるのは、あくまで引きの映像だけだ。顔が分かるまで接近させるには、かなりの技術と打ち合わせが必要だ。

迫力のある映像、追求力のある動画、インとアウトのリズムを刻むには、やはり人間の顔など寄りの絵が必要だ。

んで、DJIのドローン、mavicのジンバル機能だけを使ったやり方などがあった。つまり、翼を折りたたんだまま、ドローンを手にもって、撮影する方法だ。

まあ、それぐらい、DJIのジンバルが良くできているということ。凄く、ほしいなあ、と思っていた。

ら、愛用のコンデジが壊れてしまった。防水、耐衝撃で、カヤックや山や、沢登りに使いまくっていた。悲しい。

 

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DJI OSMOポケットを買う流れか・・・?45000円!?

store.dji.com

 

日記

 

今週の月曜日に、今年2回目の風邪をひいた。

バイクに乗らなくなってしまうと、こんなにも男は貧弱になる。そんなことを証明するかのように、あっさりと風邪をひいてしまった。

仕事をするどころではなく、3日間ひたすら寝る。

すると、djiから「オスモポケットってのを作ったから宜しく!」というメール。猛烈にほしくなってしまった。

仕事をするしかない。物欲にケツを叩かれて、病床を蹴っ飛ばした。